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2010年8月

家出少女 変態後の輪姦された告白 1

自分でいうのも可笑しいですが、私の瞳が好きだし、鼻筋もスーと通り小さくて可愛いと思っていました。
電車でよく痴漢に触られました、でもなぜか彼氏が出来ないのです。初めて勤めた○信用金庫で好きな男性はいましたが、挨拶はにこにこしてくれるが誘ってくれるとか、ラブレターなど貰った事もないのです。
今までは女子高校だけなので仕方がないと思っていました。

勤め先からの帰り道、いつも通る道に外車が止まってました。何気なく通り過ぎようとした時、いきなり後ろから口を塞がれ、後部座席に押し込まれました。
まだ6月の中旬で明るいのに誰も通ってないので、あっと3人の男達に攫われたのです。
車は走り出しました。自分が借りているワンルームマンションまであと2分位の場所でした。
押し込んだ髭顔の男に顎を掴まれ、顔を上向きにされました。
「可愛い顔をしてるじゃねえか」
反対側の小太りの男にも覗かれ、私のオッパイは揉まれながら、
「いいオッパイじゃねえか。張ってるぜ」
とキスをしてきたのです。顔を叛けてかわしましたが、でもすぐに両手を後手に縛られてから、鼻を抓まれ苦しく開けた口に、穴だらけのボールを押し込まれたのです。それから長い髪の後頭部でボールの両側バンドが締め付けられ、穴ボールの上から両側の男達に唾液を垂らされ飲まされました。
乳房も交互に揉まれ股間に手を差し込まれ、パンテイの上からクレパスの奥まで触られました。

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家出少女 旅行中の調教 2

それを見たゴール様は、太股、首筋、恥丘にその生物を這わせます。
そして奥様と私の秘部がじっとりと濡れたことを確認すると、二つのバイブがゴムでつながれたもので奥様と私の秘部を繋ぎました。
ゴムで引っ張られているので、集中していないと抜け落ちてしまいます。
先に抜けてしまった方に、お仕置きが待っていると言われました。そして、私は負けてしまったのです。
「負けちゃった..」と思っていると、ゴール様はなめくじ(?)を取り除いて、縄をほどいて下さいました。
そして、目隠しをされて、奥様の方へお尻をつきだす姿勢で木に手首を縛られました。
そして、おなかのあたりに腹巻きのように何かを巻かれます。
すると、ゴール様の愛犬の息づかいが聞こえてきて、背中に重みがかかり、秘部に何かが入ってきます。
(バイブ..?)と一瞬思いましたが、激しく子宮を突く動きはバイブのものではありません。
昨日頂いたゴール様のものでもない..(犬??もしかして、犬としてるの?!)初めての獣姦でした。
目隠しを取って頂き後ろを見ると、思ったとおり犬に突かれていました。
いつのまにか縄を解かれた奥様に乳首を責められ、亜夜は犬との行為に感じはじめてしまいました。
自分から腰を振り、声をあげる..。
犬が亜夜の中で果てると、今度は奥様が腰に直径8cm以上もあるディルドーがついたベルトを付け、一気に亜夜に挿入しました。
ものすごい痛みに、思わず叫んでしまいましたが、奥様は腰を動かします。
段々と痛みが快感に変わり、亜夜は涎を垂らしながら奥様に激しく突かれ、何度も絶頂に達しました。
全身を痙攣させる私を見て、
御主人様は「お仕置きをしたのに汚い液をこんなに垂らして喜ぶ亜夜には、
もっと厳しくしなきゃいけないな。」と言い、ゴール様と明日も会う約束をなさって、この日の調教は終わりました。

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家出少女 旅行中の調教 1

ある山でのことです。所有者のゴール様と、彼の奥様、愛犬、御主人様、亜夜で行きました。
山と言っても、とても明るくて林のような感じです。
奥様は魅力的な体をした28歳の方で、ゴール様から7年にわたって調教されているというお話でした。

20分ほど歩くと、少し開けた場所に出ました。小さな小屋があります。
ゴール様が小屋へ行き、御主人様が私と奥様に服を脱ぐように言いました。そして2本の太い木に、2人が向かい合うように縛り付けて下さいました。
自然の中で裸で縛られていると、何とも言えない開放感と爽やかさでいっぱいです。
向かいに縛られた奥様の美しさも素晴らしいです。
しかしこの後、私はおぞましい快感に包まれることになってしまいました。
小屋から戻ったゴール様が奥様と亜夜の乳房に透明の液体を塗りました。
乳房に巨大ななめくじのような生物を乗せたのです。
冷たい感触と、なめくじ特有の動き。
液体を塗った部分を這い回るおぞましい生物。
奥様は感じているようですが、私は気持ちが悪くて目を背けてしまいました。
しかし、気持ちとは逆に亜夜の乳首は反応してしまいます。奥様の赤く染まった肌と嬌声..私も声をあげてしまいました。 

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家出少女 蕩ける不倫7

「じゅじゅじゅ・・べろべろべろ・・」

西条さんは、卑猥な音をたてながら、舌と唇と鼻を使って時には優しく、

 
時には荒々しく舐め続けるのです。

「ああ・いいく・あぁ・・」

「入れてあげるよ」

放心状態の私を正面から抱き抱える格好で、そのままベッドに腰掛けます。

そして、膝の上に私を跨がせる格好で対面座位の体位を採ると

突然西条さんが入ってきました。

「ああっははんんん・・・」

私は、大きく後に仰け反っってしまいました。

「ああ、奥まで入ってるね」

ゆっくりと腰を使い始めます。

お尻を両手で抱え込み、ゆっくりと回転運動を加えるSさん。

私は、さりげなくクリ○リスがあたって気持ちがよくてたまらなかった。

西条さんはさらに、私の胸をまさぐると乳首に吸い付く。

「ああ・・いい・・吸って・・もっと強くすって・・」

思わず、叫んでしまいました。

そして、正常位。

西条さんは一気に激しいピストン。

「ああ・・い・いくぅ・・・」

私は、一気に上り詰めていく。

もう、頭は真っ白。快感だけが残ってしまいました。

西条さんは、ぎゅっと抱きしめて何度も

「ありがとう」って言ってくれました。

これが、不倫のはじまり・・・

(完)

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家出少女 蕩ける不倫6

西条さんは、突然ベッドの上に枕を置き始めた。

私をその上に乗せると、両手で股を大きく開いた。

「いや、恥ずかしいです」

「綺麗だよ」

そういうと、右手で私の花びらをいじり始めました。

「すっごい濡れてるね、いやらしいんだね」

まるで観察するように、一枚一枚花びらを開いていきます。
私は触れられるたびに、感じてしまい愛液が
あふれでるのが自分でもわかりました。

次の瞬間、西条さんは顔を私の花びらに思いっきり
近づけました。

ふぅぅ・・・

息をふきかけながら、両手で私の花びらを完全に開き、
熱い空気を送り込みます。

「あぁ、、困ります。そんな・・・」

「ああ、食べるのが惜しくなってね」

西条さんは、触るか触らないかくらいのソフトなタッチで
私の入り口を行ったり来たりします。

「たまらない・・・」

ぬぅ・・・

西条さんの舌が、私のおま○こを直撃しました。

ぴちゃぴちゃといやらしい音をたてながら、
少し強い刺激を与えてくるのです。

私は電気が走ったようでした。

「ぁぁ、はぁ、あん、、あああぁ」

声が抑えきれません。

「西条さん、いい、気持ちいい、、、」

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家出少女 蕩ける不倫5

ホテルの部屋に入ったふたりは

ホテルの部屋に入ったふたりは
もうただのオスとメス・・・

そのまま抱き合い、舌と舌を絡めあう
ぐちょぐちょのキス。

いくらでも唾液がこぼれる。

同時に私の秘部はしっとり濡れていく。

「ずっとこうしたかった」

「私も・・・」

「もう何も言うな」

西条さんはスルスルと私を脱がせていく。

「座って」

ベッドの上に座らされた。

「ああエッチだな。由美の身体すごく綺麗だ。
 こんな綺麗な身体抱いていいのかな、、」

そっと私に触れる。

それだけで、身体がビクッとなった。

西条さんは私の肩に、そっとキスをした。
そして舌をちろちろと動かしながら、胸元全体に
キスをしてくる。

(あぁ・・これから抱かれるんだ)

心から待ち望んでいた時だった。
胸元の愛撫が、乳房にくることを私は望んだ。

私の想いをわかっているかのように
西条さんの唇が私の乳首に触れた。
乳首の軸を丹念に舐めまわす。

はぁぁ、、あぁー、、

声が出てしまう。

「感じやすいんだね」

「は、、はい」

「おれエッチな子大好きだよ」

優しく胸をもみながら、乳首を舐めたり吸ったり・・・
その度に快感がおしよせる。

「アソコ見てもいいかなぁ」

卑猥なささやきをする西条さん。

コクン・・

私は小さくうなずく。

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家出少女 蕩ける不倫4

そして次の週、待ちに待ったメール音が鳴ります。

「遅くなっちゃったけど、今から出てこれない?」

私は実は家に着いていたのですが、

「はい!もちろんです♪」

早速、こじんまりとしたバーで待ち合わせました。

「いや、またこうやって二人で飲めるとは夢にもおもわなかったよ。
 すっかり嫌われたもんだと思ってた」

「そんなことないんです。ただ・・・」

「そーだよな・・・」

お互い壁があることには気づいていましたが、あえてそこには
触れませんでした。

一杯のカクテルを片手に持ちながら、沈黙が続きました。
ふと西条さんが、

「由美ちゃん、カラオケ好き?」

と聞きました。

「はい」

二人きりになれるところならどこでもよかった。
私たちはカラオケボックスに場所を移しました。

「ごゆっくりどうぞ!」

カラオケのお姉さんが部屋を出て行きました。

「曲入れよう、曲・・・」

西条さんは何か番号をいれていました。
私の身体は、ジンジンと熱くなっています。

前奏が流れ、字幕が出てきましたが、西条さんは歌いだしません。

次の瞬間、私は唇を奪われました。

舌と舌がからみあう、濃厚なキス。
唾液があふれ、流れてしまうほどでした。

「由美を抱きたい」

「うん」

私はこくんとうなずきました。

「でもここでは無理でしょ」

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家出少女 蕩ける不倫3

そして帰り道。彼は当然のようにキスを求めてきました。

「だめ・・・」

私は拒みました。やはり妻子がいることが気になっていたのです。

「そうだよな。おれはオジサンだもんなぁ」

(ちがう、、ちがうの。オトコとして欲してるの・・・だけど)

私は、どうしてもその日は受け入れることができずに家に帰りました。

次の日。西条さんとエレベーターで乗り合せました。
私が気まずいなぁとドキドキしていると、

「あーあ、、由美りんに拒否されちゃったもんなぁ・・」

と軽く笑顔で話しかけてきました。
私はほっとすると同時に、どうしてもこの人に抱かれてみたいと
思うようになりました。

三日後、メールを打ちました。

「今夜はこの間のお礼に一緒に行きたいお店があるのですが、よかったらいかがですか?」

すると西条さんは、

「ごめん。少し待って。今週山だから」

なんとお預けされてしまったのです、、、
ますます私は惹かれてしまっていました。

時間が経つほど、抱かれたいという想いが増してしまいます。

西条さんもそれに気づいたいのでしょうか?

さりげなくお茶をしている時に、他の社員の前で

「由美ちゃん、肌すべすべだよねー。あっ、セクハラかぁ・・・」

なんて刺激してきます。

彼からの連絡を私は心待ちにしていました。

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家出少女 蕩ける不倫2

確かに素敵なバーでした。

目の前には東京のビルディングがキラキラと輝いていました。

「素敵・・・」

「いいだろ。ここに綺麗な人を連れて行きたかったんだ」

「西条さん・・・」

西条さんが褒めてくれるなんて、意外でうれしかった。

「由美はがんばってるよなぁ」

「ありがとうございます・・・」

突然肩に手をまわしてくる西条さん。

(えっどういうこと?)

驚きましたが、肩から伝わる熱に私はドキドキしてしまいました。

「会社ってさぁ、いろいろあるよなぁ」

一生懸命、話してくれる西条さんですが、私は熱い方の手が気になって仕方ありません。

「はい・・・」

そういいながら、身体が火照っていきます。

ふと、西条さんの手が伸びました。

私の乳房に手が届いたのです。優しく乳首を服の上から撫でながら

話をつづけます。私は手を振り払うこともできず、ただただ感じてしまいました。

でも話は会社の話。

身体はジンジンと西条さんを求めていましたが、頭の中で、

西条さんには家族がいる、、何やってるの?

と悶々としていました。

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家出少女 蕩ける不倫①

23歳の時でした。

その頃、私は仕事をはじめたばかりで毎日緊張した日々を送っていました。
彼氏は4歳年下。

まだ大学に入ったばかりで、ウキウキしている様子でした。
将来のことを話すときも、私がお姉さん。
「どうしたらいい?」
と聞く幼い彼をかわいいと思っていました。

職場で出会ったのが、Sさん。
後輩に厳しく、上司にもたてつくタイプのやり手でした。
どちらかというと近寄りがたい・・・
何か怒られてしまうような、そんな人でした。
奥さんと子どもがいることもすぐに知りました。

べつにふーんという感じ。

私は新人でしたから、数々の失敗をしていました。
失敗するたびに落ち込み、でもそれを19歳の彼に
理解してもらうことは難しい状況でした。

そんな時、様々な場面で助けてくれているSさんの行動に
ふと気づきました。

あ、、いいヒトなんだぁ。

少し好感をもちました。

そんなある時、部署のみんなで飲む機会があり、
隣に座った西条さんが

「夜景のすっごい綺麗なバーがあるんだけど、
俺そこに由美を連れて行きたいなぁ」

と酔っ払った顔で言うのです。

いきなり呼び捨て?
ちょっとドキっとしました。でもすぐに、

「またぁ、、なに言ってるんですか」

軽く受け流したのですが、

「俺は連れて行きたい。
部長、由美ちゃんさらっていいですか?」

「おお行ってこい、行ってこい!」

「そんなぁ・・・」

「大丈夫だよ。西条は妻子もちだし、家族と仲いいんだから」

周りにも促され、早速出発することに・・・

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家出少女 cross2

第2話:捨てた男

夜半過ぎまで会社にいた。

仕事の〆切りに追われ、ひたすらブラックコーヒーを煽っている。
今日こそは、ナニがなんでも彼女とデートしなければならない、という甘い強迫観念に捕われていた。

随分と会っていないから、きっと溜まってるにちがいない。
なにしろ僕がそうなんだから。

楽しみだな

そう考えるとパタパタとキーを打つリズムが心地よくなってくる。


男が事務なんてやってるから、合コンでは随分と珍しがられて結構イイんだけど。
職場でもやはり事務は女が多い。チヤホヤされるのも悪くなかった。

合コンでは「マジメなヤツだから」と紹介されるのが定番。
女はミタメによらずマジメな男にヨワいから。

来る者を拒まず、去る者を追わない。
それでよかった。

執着なんてゴミだ。

そう思って今迄バカみたいにマジメに仕事してきたんだ。

人間いつかはそんな生活にヒビが入る。
いつの間にか趣味も嗜好もなくなってしまっていた。

ところが仕事先で知り合った人間から「ギターやらないか」と誘われ、これも付き合いの一つだ、と軽い気持ちでバンド結成を引き受けたら、意外にもそれが僕の乾いた生活を潤してくれた。

バンドを始めて2ヶ月ほど経った時、ある女に出会った。女は可愛く笑う。
くるくるとよく笑う。

僕はその笑顔がたまらなく愛おしく感じる。

その女とセックスに至る迄、時間はかからなかった。
会社帰りにバッタリと駅で会い、一杯飲んで行こうかという話になって、その後、酒もそこそこにホテルに入っていく。

彼女との関係は、そんな風に、実にスムーズに始まった。


「さあて」
そろそろ仕事も片付き始めた。
ケータイを取り出してメールを打ち始める。

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今からだと遅いけど
どうする?
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彼女との、軽いやり取りのあと、会うことになった。


その日の勃ち具合は最高のテンションで、何の滞りもなく気持ち良くなれた。

温かい体に高ぶった唇が触れる。
「ぅんっ…」
胸元に触れた時に淡く吐息を洩らした。

「ナニ?…感じる?」

僕は少し笑って意地悪く聞いた。
コクリとうなづく照れくさそうな表情がいやらしい。

薄目なんか開けちゃって。
腰を浮かせて気持ちいいんだな。

短かめのスカートから細長く伸びる脚が好きだ。
シルバーラメのミュールがよく似合ってる。

春はパンプス、夏はミュール。女らしい脚ってのはこうこなくちゃいけない。
太股の上にいけばいくほど肉が柔らかくて触り心地がいい。

僕は丁寧に彼女の腿を撫でる。爪先で内側をなぞると彼女の体がビクビクと震えた。

ほらほら、感じてる。

「今日はなんか可愛いね。ガマンできないからさ、挿れさせて」
「うふぅ…ん」

ナニそれ。返事かな?ソソるな。イチイチ可愛い。

僕は首に手を回して彼女を抱き締めるようにしながら挿れる。
にゅるにゅると彼女は僕を受け入れていく。たまらない。この吸い込まれるような感覚が。

彼女と連絡が取れない日が続いた。

僕は無性に恐くなって、何度か電話をかける。本当は出るまでかけたかったけど、あまりしつこいと、ストーカーかと思われてなんだかそうなりそうな自分が恐いのでやめた。

彼女のことを考えながらも、日々の生活に追われていた頃、彼女から電話があった。

2週間経ち、ようやくかかってきた彼女からの電話の声は疲れていた。力ないわけではないが、固めた意思に基づく深く思慮に満ちた声?

電話の内容はこうだ。

「好きな男ができたから、別かれてほしいの」

信じられなかった。もちろん僕の答えはノーだ。

「そんなことできないよ。無理だもん。好きなんだから」

僕は彼女の申し出を頑に断ってぶっきらぼうに電話を切った。

ナニ考えてんだ、いきなり連絡が途絶えたと思ったら、好きな男ができただって?
僕は彼女だったら幸せになれると確信していたから、浮かれていた自分が急にミジメになって涙が出そうになった。

ミジメな気持ちが怒りに変わるには時間はかからない。
腹が立った僕はマナミを呼出した。

飛んできたマナミはセックスフレンドだった。
マナミは呼び出すにはちょうどいい、都合のイイ女だ。何年か前に知り合った。
年上で、気前もよく口も堅い。少し前までは嫉妬深い女だったが、最近ようやく吹っ切れたようだ。

近くの安いホテルに入った。
光ファイバーで作られたホコリだらけの木のモチーフが、なお一層安っぽさを引き立てる。

「しょうがないよ、俺、モテるから」

いつもマナミに言って聞かせる言葉だった。せめてもの「やさしさ」に、いつもマナミに突き放して放つ言葉だった。

俺に関わるな。
俺はお前のことを一生懸命考えるなんてできない。
俺はカラッポだから、入ってくるんじゃない。
と。
なのに俺はマナミとのセックスの間に、自分をどれだけマナミに注ぎ込んだかわからない。

「マナミ、聞けよ。あの女さ、ほんとムカつくんだ」
「へえ、そうなんだ」

「なんだ、気のない返事だな」
「だって、そんなこと言ったってさ、どうせ戻っていくんでショ」
「そんなこたーねえよ、今日で最後にするかなって、ちょっとぐらいは思ってる」

ほんとか?俺。

俺はマナミと腰を繋げながらとめどなく話した。
マナミはいつも俺の話を聞き、いつも最後にこういう。

「わたし、アンタのこと受け止めてあげるよ」

眼から涙がこぼれた。
信じられなかった。自分には流す涙があったのか。悲しいのか、嬉しいのか、安心なのか不安なのか。涙の所在がわからない。
「なんだそれ」といって笑って終わるはずのマナミの真剣な言葉が、今日の俺にはひどくやさしく、心に響いた。

俺はオウオウと唸りながらマナミの腰に打ち付ける。
マナミから潮が噴き出した。
けして小さくないマナミの胸が上下に揺れ、顔も声も、流れる水音も、こんな場末の安ホテル、湿った暖かさがいやらしさを包んでくれた。

「俺のことを底から分かってくれるのは、きっとお前だけだな」

俺はそうやって、一瞬でも受け止めてくれたマナミに感謝の気持ちを述べてセックスを終わった。
いつもの、ただの行為なら、きっとそんなことは言わない。
この日は特別だった。


しかし、ホテルを出る頃、俺にはマナミへの気持ちはなかった。
そんな二人が一緒にいたって、きっと破滅的な関係にしかならない。
虚しさが漂う。梅雨の切れ間の乾いた空気の中、ただなんとなくマナミの手を握って車道を眺めていた。

赤信号の横断歩道。
向い側に見慣れた女が立っていた。
彼女だった。信じられなかった。

「彼女だ」

短くつぶやくと、俺の手を握るマナミの手に力がこもった。
俺はその手を振りほどく。

「テツ…っ」
「ごめん!俺やっぱもうちょっと頑張るわ!」

マナミの手は借りるまい。
これからは自分の手で彼女をつないでいくことにした。
セックスフレンドで心は癒せなかった。

彼女の手を放すなんて考えられない。
いましがた自分の全てを曝け出して、体を一つにしたこの女を捨ててでも、彼女との人生を送って生きたい。

男なんて勝手なイキモノだ。
そんなこと、女だったら知っておけ。

それでも俺がいいんなら、その時は拒みはしない。
いつでも挿れてやる。



(cross 了)

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家出少女 ross1

第1話:捨てられた女

小さい頃から愛情というものに飢えていた。

ナニが枯渇していたのか、今となっては持って生まれた性格のせいかとも思うが、真相は薮の中。
どこをどう育ってきたらこんな人間に育つのかと、自分でも不思議でならない。

どうでもいいことなんだけど。
もうすでに側にいない人間など、私には意味も持たず、日々を流れる「風」にしか感じない。
親兄弟であろうとも。

――次発/急行――

あっ、そうそう。
そうゆう感じ。

都心から郊外へ流れるローカル線に乗り込み、携帯電話を取り出してメールボックスをチェックする。

座って帰りたいからって、1駅で折返す電車に乗るなんてセコイけど、そのセコさだって私の一部だ。

夕方受取ったテツヤからのメールをぼんやりと眺めている。

今日は無理。
来週水曜以降で。

短いメールだ。
長い文章を打つ気がないのは昔からで、どうせ身体オンリーの関係なんだから、それ以上を求める気なんてサラサラないのだけど。

いや、ないのか?私。

不思議と淋しい気分になってしまうのは車窓を流れる明かりの間隔が思いのほか開いていたり、隣近所に腰掛ける乗客の表情が今にも自殺を図りそうなくらい疲れて澱んでいるからだろうか。

こんな風に疲れながら帰るのも悪くないと思うのは、みんなどこかしら自分に似ているからだろうと考えてみたりして、シートの端に座って手すりに肘を付くのだ。

今日は無理。
来週水曜以降で。

随分勝手な内容だ、今日にして欲しいと月曜の昼間にメールをよこしたのはテツヤなのに。

2週間セックスしていない。
もう随分と雨があたたかい。

こんな欲望そそる季節にこんな疲れた人々と、自分と、ボロいローカル電車。
たまらずに私は半袖のパーカーのポケットからヘッドホンコードのグルグルと巻かれたアイポッドを取り出した。

初期型だから、ハードディスクみたいにデカくて重い。
こんなの持ってるヤツなんて、この電車の中、私以外にいなさそうなんだけど、そういう「おれまだ頑張れるから」みたいに訴えかけてくる傷だらけになった真鍮の背面が、触れた温度にギャップを感じさせる。

『俺まだ頑張れるよ』

そう言ったのはテツヤだった。
乾いた晴れ間を見せる6月。明け方の横断歩道で、私の手を振りほどいて彼女の元へ駆け出したテツヤの言葉だった。

6月に乾いた空、五月晴れなんて珍しいから、忘れようとしても忘れられない。
忘れられないのは天候のせいなんかじゃないことは分かってるんだけど。

テツヤに彼女がいたことは、随分と前から分かっていた。
『こんなイイ男に、彼女がいないわけがない』と、そんな風にだれもが口を揃えて誉めるテツヤを、白々しい目で見ていたのは私だけだった。

イイ男なもんか、
バカにしやがって。

影みたいな私の身体を捌け口にしていたのはどこのイイ男だ。
いっそ、ゴムなしで射精させて子供でも作ってしまえば、私の気持ちはスカッとするんだろうか。

私はアイポッドのボリュームを上げてデビッドボウイのレイディ・スターダストという曲を聞いた。
この曲を夜通し口ずさみながら、電車に乗っていたかった。
握りしめたままのケータイが、私に寄り添っているみたいだった。
物悲しくもあり、爽快感さえもあり、それでいて一切の風情を脱ぎ払ったような死んだディスプレイに映り流れるネオンが、星屑みたいで素敵なんだろうか。

26才という年になって、3才年下のバンドマンを好きになったが、その気持ちはみるみるウチに恋愛から嫉妬へ変化し、やがて老婆心に変わり、挙げ句の果てには快楽の道具でしかなくなったが、こんなふうにツラツラとテツヤの事を考えていること自体、私にはまだ彼への執着心がまとわりついているのだ。

「自分はきっとどこかオカシイんだろう」と思う。
そんな風に思うのは「かわいそう」かもしれないけれど。

こんな自分はキモチワルイな。
きっとセックスの途中でウソをついて、ナイショで子供を作っても、テツヤは私のモトに留まらない。
それに気付いたからセックスオンリーな関係を選んだんだった。

と、いつも考えては帽子を深くかぶって涙を隠すのだ。


その夜は、突然だった。

さして混んでもいない車内で、適度に隙間を開けて座っていた隣人の間に突然座り込んできた男が、私の手を握ってきた。

「わかるよ」

私は男の一言に咽から込み上げる熱い空気の固まりを嗚咽に変える。

「ずっと泣いてたんでしょ?」

なんだこいつ。

はじめに私が思った感想は、コ汚い格好をして、いかにも裏方っぽい女の手を突然握りしめるキモい男への不信感だったのに、手のひらに伝わる心地よい温度と湿度は、私の心にフィットした。

心なんて曖昧なものを「これ」と定義付けるなら、緩くパーマのかかった無精髭の男の体温が、今の私にとっての「こころ」かもしれないと、その時の私は本気でそう思った。

その日、私は自宅最寄駅から6つの駅を通り過ぎた街で、その男とセックスした。

田舎から出てきて3年ほどしか経っていない私に、知り合いがいるはずもないから、わざわざ自分の家から離れたホテルを選ぶ必要なんてないのだけど、セコイ私には似合いの行動だろう。

私は男と身体を重ね、腰を振り合いながら泣いていた。
電車の中から泣きっぱなしだ。

なのに「恥ずかしい」というキモチを持つほか、今の自分が冷静でいられる術がなかった。

私の中でテツヤが弱音を吐いて、彼女を罵倒し、俺の事を底から分かってくれるのはお前だけだ、そう言ったテツヤを大切に抱きしめながら、見ず知らずの男とセックスしている。

悲しいのか、2週間振りのセックスで気持ちが解放されたのか、涙が止まらない。
ヒダを剥かれて丸出しになったクリトリスを執拗に刺激されて、悲鳴を上げながら力つきた。

力尽きた私のアソコに、今度はペニスが入ってくる。
私の両足を高らかに持ち上げて、男は打ち付ける。

ああ
キモチイイ


朝、ホテルで目が覚めて、バラバラにぶちまけられた私の鞄と、空になった財布が男の代わりに隣で眠っていた。

セコイな

自分も、男も、テツヤも、昨日の電車も。
もう涙もナニも出ない。

ペニスとクリトリスは、赤ちゃんが母親のお腹にいる時に形状を変えて性別が別れるのだけど、どちらも最初は同じものなんだって。

私のクリトリスが、ペニスだったら良かったのに。



(cross 第1話おわり/第2話につづく)

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家出少女 蘭開~人妻優子の場合~4

第4話:魅惑の体

両手の手錠はそのままに……駿河は優子の体を突然に押さえつけ、背後から体ごと手摺へと押し付けると、その乳房から上の部分は身を乗り出すような姿に変わる。形の良い胸のラインが外からも丸見えな程。

もっともこの時間帯に明かりを消した屋上は、下から見上げた所で闇に呑まれるのだが……。

それを知らない優子の興奮は更に高まる。

「そんな……これじゃ見えちゃう」

ひんやりとした手摺に打ち付けられた両の乳房も相変わらず、玩具によって規則的に揺れる。

抵抗が一切無い事を確認すると、今度は喘ぎ声を我慢してなんとか耐えようとする優子の後ろへ回り待ちきれず女の香りを立てるそこへと狙いを定めると……
下着を取り去った秘所からはいつの間にか更にぬるぬると湿り気が増し、濡れ溢れているその中へ玩具を一気に突き立てた。

「いやぁっ……んん……」

思わず漏れてしまった声を再び噤み、しかし更に深く受け入れようと揺れる腰が全身からの喜びを表す。

1時間も焦らされた体にやって来た待望の来訪者に、優子は体をひくひくと震わせて……そしてあっという間に一瞬で絶頂へと引き上げられた。

「私……ダメなの。もう……」

声を抑えようとすればするほど、膣壁はぎゅうっと玩具を締め付け、その動きは駿河の手へもリアルに伝わっていく。子宮全体が収縮し、更に奥へと飲み込むような、まるで胎内だけは別の生き物であるかのような、そんな動き。

その姿に苦笑しながらも、優子の体内からやって来る動きに合わせて更に突き動かしてやると、激しく痙攣するように体を震わせ、首をいやいやするように横へと振り、声を噛み殺したまま……果てた。

息を荒くしたまま呆然としている優子を彼が簡単に許す筈はない。性癖を引き出している時、おそらく駿河の脳内にはアドレナリンのようなものが出ているんだろう。こうなったら最後、駿河が満足するまで遊戯が終わる事は無い。

一度手錠を外すと、ふらふらになった優子を屋上に置いてあるベンチへと誘導し、座らせた。いつもは駿河が星を見ながらタバコを吸うお気に入りの休憩所だったりするのだが……。

乱れた着衣のままそこに座らせ、今度は両足を大きく広げさせると足首を高く持ち上げ、その細い足首をまた手摺へと固定してしまう。

深夜に足を全開にして、色っぽい視線を飛ばす優子……その姿はこれまでのどの姿よりも魅力的で、綺麗としか言い様がない。

「まだ足りないでしょう」

もう返事も出来ないぐらいに蕩けてしまい、それでも求めるように上の口も、下の口も半開きのままひくひくと求めるように誘う優子に今度はあえて優しく、そっと玩具を挿入した。

白い肌に赤い色をした玩具が進入して行く様は、時に男女のそれよりもずっと視覚的に淫らさを醸し出していて……。

「ん……はあっ」

 
   
      
  再度訪れた快楽の波に、足を伸ばしてみたり、大きく動かしてみたり。もう、優子の前には何も見えていなかった。構ってくれない夫の事を忘れるように、ただひたすら淫靡に踊り続ける。

(こんな格好で……それも見られる事で満たされるなんて)

新しい自分との出会いに喜びと不安を抱える優子に対し、もう大丈夫だろう、と駿河は手を休める事なく優子の奥を小刻みに責め続けながらもゆっくりと息を吐いた。

今晩はきっと、もっと楽しい宴が待っている筈だから。

最後の仕上げをするように、何度も、何度も玩具は優子を突き上げる。下着を取ってしまった事で行き場を無くしたローターを肉芽へと押し付けると、声にならない声を上げまた絶頂へ。

「これだけ感じやすいなら、これはどうですか?」

全てを任せてただ快楽を貪る優子の右ブラジャーに入っていたローターも取り出し、今度は二つの玩具で大きく自己主張するように突起した肉芽を挟み込む様に押し付ける。

一つでは物足りない振動も、二つが合わさればそれは一気に凶器へと変化する。

「何これ……嫌っ」

口では嫌だと言いながらも、刺激が交わった瞬間に愛液の量は一気に増え大量に流れ出す。

左手でローターを固定し、右手を前後に動かし続ける駿河の前で、優子はもう何度目か分からない高みへと達していった。

枯れる事の無い優子の泉にようやく駿河が満足したのは、それから更に3度程イカせた後で…??…。

未だじんじんと体に残る震えを感じながらも、なんとか冷静さを取り戻してきた優子を解放した駿河は下着を自分のポケットへしまい、スカートだけを着る様に促した。

「駿河さん? 私の下着……」

「無い方がきっと貴方の魅力を引き出しますよ」

駿河の言葉の意味が分からないまま、それでもまだ濡れたまま剥き出しの下半身にミニスカートで外を歩く自分の姿。それを思うだけでまた、体の芯が熱くなる。

自らそんな冒険をしてみたいとさえも……。

「ありがとう」

「また、お待ちしていますよ」

おそらく優子が帰宅してまもなく、いつもの通り仕事で遅い夫が帰ってくるだろう。

そして……

いつになく上気した肌の妻を見たら……どんな男だって抱かずにはいられまい。その位今日の優子はいつもの露出なんかでは追いつけない程の、誘うようなイヤラシイ顔をしているのだから。

感じやすくなっている体に、心からずっと求めていた夫のモノが入ったら一体どうなってしまうのか。久しぶりの行為、それも事前にこれだけ体を温めてある状態で。

そんな事を想像しながらポケットからタバコを取り出すと、さっきまで優子が乱れていたその場所へと腰を下ろし、駿河は深く煙を吸い込む。空を見上げると都会らしく少しの星達が駿河を迎えていた。

「さて、そろそろ店を片付けなくては」

「じゃあ、行きますよ」

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家出少女 蘭開~人妻優子の場合~3

第3話:放置の果てに

「優子さん大丈夫でしょうか?」

駿河が店へと戻ると、皿を洗っていた手を止め、アルバイトの青年は心配そうな視線を向ける。おそらくいつもよりも戻って来るのが遅かったせいだろう。

「遅くなってすまない。ま、少し休んだら大丈夫だろう。また後で様子を見に行くよ」

そんな青年を安心させるように、駿河はいつものポーカーフェイスで、さらりと返事をする。まさかこの店の屋上で淫らな遊戯が繰り広げられているとも知らず、一つ、二つ、空きテーブルが増えていき、閉店間近の店は静かに静かに更けて行く。

優子の様子を思い、時々誰にも気付かれぬよう密かな笑みを浮かべながらも、いつもの様にてきぱきと動き、最後の客を送り出すと……駿河は青年を呼び寄せた。

「今日は忙しかったから疲れただろう。もう上がっていいよ」

青年が仕事帰りに付き合い始めた彼女の家へと通っている事は知っている。きっと早く会いたいだろう。珍しい提案に一瞬不安そうな顔をする青年だったが

「優子さんは当分目覚めなさそうだしね。待ちながらゆっくり片付けるよ」

そう、安心させるように声をかけると実直そうな彼は心から嬉しそうに頭を下げ

「お疲れ様でした!!」

いそいそと着替え、大声で叫ぶと帰って行った。

そんな声すら屋上にいる今の優子には刺激になるだろう。突然耳元へと届いた、しかも聞きなれた声。これまでに何度か顔を合わせた事のある青年に見られまいと、今頃必死に唇を噛んでいる筈だ。

「そろそろ……かな」

優子を屋上へと放置してから1時間。片付けもそこそこに、一度2階にある事務所へ立ち寄ると新たな玩具を探す。一見普通のトランクを開くとそこには色とりどりの責め具が溢れている。もちろんそれは、駿河が丹念に手入れをしている選りすぐりのものばかりだ。

その中の一つ。これがいいだろう……そんな呟きと共に真っ赤な男性器を象った玩具を無造作に手に取ると足早に再び屋上へと戻った。

   
      
  そこには……。

はぁはぁと荒い息を吐きながら、顔をピンクに染め、ドアの開いた方向……即ち駿河の顔を見つめ、訴えかけるような視線を投げる優子の姿が見てとれる。この扉が開いた音にすら、もしかしたら駿河では無いかも知れない……とその心を煽ったに違いない。

そんな優子にゆっくりと近付きながら

「どうです?たくさん見て貰えましたか?」

「そんな事……」

問いかけた声に顔を赤らめて首を横に振る優子。

「ずっと声を我慢していたんですね。で、こんなに濡らしてしまった……と」

小鹿のように震えながら立つ足の間からは薄い下着を通り抜けた透明な液体が糸を引き、そのままコンクリートの床へと伸びてしまっている。駿河の長い指がその蜜をそっと絡め取ると

「ううっ」

これまでの我慢もむなしく、直接的な刺激にそれだけで甘い声が漏れてしまう。

「こんな刺激じゃ物足りなかったでしょう」

声の出せない状態で3箇所を微妙な振動で1時間も責められ続け、それでもイク事は許さない駿河の意地悪な設定にもう優子が勝てる筈も無い。女の喜びを知っている体であればなおさら……。

「欲しいの……中にも。駿河さんのが、欲しいの」

耐え切れず、うわ言のように何度も繰り返す背中に

「私のはダメですよ。それでは浮気になってしまいますからね。けれど……」

そう、駿河にはポリシーがあり、こんな遊びはするものの決して相手を抱いたりはしない。不満を漏らしつつもちゃんと夫を愛している優子に対して、特にそれは必要な事。

もちろん駿河にとっても不満など無く、ただ一線を越える事なくこうして相手の性癖を引き出す事が楽しいのだ。

一方、やんわりと否定され耐え切れないというように体勢を崩した優子の目の前に現れたのは……先程手にしていたあの卑猥な形をした赤い玩具。

「そんな大きいの……」

不安そうな表情の奥に、物欲しげな瞳がきらりと揺れる。

「止めておきますか?」

それを承知の上で、今にも唇に触れそうなぐらいに近付けた玩具をぱっと取り上げると

「いやっ、嫌なの。それが欲しいの」

突然姿を消した玩具に、もう我慢できないと駄々をこねるように、首Z?を振って腰をくねらせる。

「そうですか。じゃあ……これは取ってしまいましょう」

スカートのホックを外すと一気に下着ごと抜き去り、露になった下半身を春風がなぞっていく。

皺にならないよう床にそっと着衣を置き、視線を戻した駿河の目の前に映ったのは、ハイヒールから尻までが美しい線を描き、乱れた上半身はそのままといういやらしい姿。

周りの店のネオンは既に消え、静かになりかけたこの街で更に駿河はその感情を追い立てる。

「外は暗いですし、誰がこの綺麗な姿を見ているか分かりませんね」

即効性である媚薬の効き目はとっくに切れているというのに……耳元で囁かれる言葉に変わらず、いや、どんどん増して行くように優子の興奮は高まるばかり。もったいない事にそれ程まで、この体は男を求めていたのだろう。

夕刻には心地良い陽気だった筈が、気付けば深夜になって気温も下がってきたと言うのに、剥き出しになった肌にうっすらと汗をかいているのもその証拠。

闇の中で駿河の声が響き渡る。

「じゃあ、行きますよ」

(蘭開 第3話おわり/第4話につづく) 

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家出少女 蘭開~人妻優子の場合~2

第2話:屋上で……

ぐったりとした優子をそのままに店内を見渡すと、ちょうど注文が落ち着き、店は普段の静けさを取り戻している。

「これなら大丈夫だろう」

誰にも聞こえない位の小さな声で駿河は呟くと、アルバイトの青年を呼び寄せた。

「どうかしましたか?」

団体客が帰り、後片付けをしていた彼が駿河の所へやって来ると

「優子さんが飲み過ぎてしまったみたいでね。少し仮眠室で寝かせてくるよ」

指で示した先にはカウンターで顔を赤くして、明らかに焦点の合っていない瞳をした優子。

その言葉に青年もあぁ、とにこやかに頷く。優子が酔い潰れる事は初めてでは無く、以前にも何度かこんな事があったのを思い出したのだろう。

「どこへ行くのぉ?」

甘えた声で全身の力を無くしている優子に苦笑いを浮かべると

「じゃあ店は見てますんで。ゆっくり休ませてあげて下さい」

疑う事無く去って行く後ろ姿を確認すると、駿河の瞳は怪しく変化を遂げる。それは、もう一つの彼の姿。ゆっくり休ませて下さい……その言葉に頷きながら、実際は真逆な事を行おうとしている自分がなんだか可笑しい。

店を彼に任せそのまま優子を抱えると階段を上がり……予定だった筈の仮眠室を通り抜けてしまうと更に一つ上の階まで足を進める。華奢な優子の体は軽々と持ち上げられ運ばれて行く。

そして……その突き当たりの扉を開くと、そこは小さなこのビルの屋上になっていた。

生ぬるい風が頬を撫でつけ、酔った体にそれが心地良いのか優子は自分の足で立ち上がると大きく伸びをした。

「気持ちいい。それに……あんなに人が見えるんだぁ」

相変わらず呂律が回らないままの彼女が言うように、眼下には酔っ払い達が大声を出しながら闊歩している。

「……見られたい優子さんにはたまらないでしょう」

「え?」
   
      
  一瞬戸惑いの表情を見せた優子の背中から抱きつくと、駿河は黙ってその手を優しく手摺へと誘導して行く。

口では困るわ……そんな言葉を発するものの、その体に抵抗の色は見えず。そのまま首筋、乳房、そして太股へと駿河の手が下りると更に求めるようにミニスカートの下半身が左右に揺れる。

体に駿河の手が触れた一瞬で、既に彼女は捕われていたのだ。媚薬に満たされた物足りない体、奥の方からもっと触れられたいと隠された欲望が顔を出す。

「あんまり声を出すと下の人に気付かれますよ? それともこの綺麗な体を見せてあげますか?」

「嫌……そんな……」

見られている……。

恥ずかしさと共に漏れる吐息とは逆に、駿河の指が下着越しに秘所に触れた時、そこからぬるっとした愛液がどろりと流れ出した。

「本当はずっとこうされたかったんじゃないですか? だからこんな誘うような格好で」
大きく開いた胸元にも駿河の手は伸び、そのまま洋服ごと押し上げると黒のブラジャーから形のいい乳房が今にも零れ落ちそうで……

優子はというと、瞳を潤ませたまま、誰に命令された訳でもないのに健気に両手で手摺を掴んだまま、大きく尻を突き出していた。もっとそのままその手が、指が欲しい。

しかし……。

そんな思いは簡単に裏切られる。

「私はもう少し仕事がありますので、ここで皆さんに見てもらうといいでしょう」

カチリ、冷たい金属音と共にどこから取り出したのか、片手ずつ手錠で手摺へと固定されてしまった優子の両手。

そんな哀れな自分の姿を見て更に

「あぁ……」

と嬉しくて堪らないような声が漏れる。こんな所で、こんな格好で……それなのに、期待をしてしまう。

「ではこれで楽しんでいて下さいね」

相変わらず紳士的な態度のまま、スーツのポケットから駿河が取り出したのは三又に先が分かれた小さなローター。コントローラー部分からは独立した3本のコードが伸び、そのそれぞれの先端に小判型をした、男性の親指よりも少し大きいぐらいの振動部分が見てとれる。一つ一つの微妙な振動を手元で調整出来る優れものだ。

まるで仕事をするように、なんでもないように淫らな玩具を弄(もてあそ)ぶ不似合いさがまた、優子の心臓を高鳴らせているに違いない。

あの駿河さんが……こんな事を? そんなギA°?ャップは時に快楽へのスパイスともなる。

無表情のまま、別れた先の二つをブラジャーのカップの中へ、そしてもう一つを下着の中へ。乳首と肉芽の隣へと這わせるように……しかし、これでは物足りないぐらいの微妙な振動でセットすると

「じゃあまた後で」

「そんな……駿河さん、本当に?」

優子の言葉にもう返事は無い。

ガチャガチャと屋上の鍵をかけ、無情にも足音はカツカツと階下へ消えていってしまう。

あとに残されたのは……たくし上げられたミニスカートに露になった下着姿を震わせる優子の姿。

「見られちゃう……でもっ、気持ちいいの」

お願い、見上げないで……そう懇願しながらも、もしこんな姿を見られてしまったら、そんな妄想が浮かんでは消える。

恥ずかしいのに。

一人……また一人と歩く姿を見送る度に、自分の体の奥からどんどんと湧きあがる本当の気持ち。

確かに、構ってくれない夫の代わりに、こうして露出の高い服を着て注目を浴びるのが快感だった。だけど……こうして更に自分を曝け出してしまって気付いた事。

本当に見て欲しかったのは、きっとこんな惨めでどうしようもない姿。この姿をあの人に見られたなら……夫の姿を思い浮かべた瞬間一気に気持ちが高まっていく。

「あぁ……このままじゃ……」
それでも、自分の手で玩具に触れる事は適わず、中途半端に快楽を引き上げていくだけ。思わず歩いている人になんとかして、と叫び出したいぐらい狂いそうになる。

ブーンという振動音を立て、震え続ける玩具と共に、ネオン街の屋上で一人声を噛み殺しながら……その体は更なる快感を求め、蠢き続けた。

(蘭開 第2話おわり/第3話につづく)

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家出少女 蘭開~人妻優子の場合~1

第1話:人妻の悩み

キラキラと輝くネオン街の一角。人通りの多い繁華街の中、周りの喧騒を鎮めるように佇む、落ち着いた雰囲気のバーが一軒。

青いライトが辺りを照らし出し、そこは、温かい春の陽気に誘われたのか一時の甘い時間を過ごすカップルや女子大生。はたまた2次会の客で店内は活気をみせる。丁度新入生や新入社員の歓迎会シーズンでもある。

そんな中……一人でカウンター席の中央へと腰掛ける女性。それが、常連客である人妻の優子だ。年は30歳を迎えたばかりでまだ子供はいない。

親しげに手を上げると、彼女はいつものように彼を呼ぶ。

「駿河さん……今日も飲みに来ちゃった」

ぱっと見ただけでは25歳ぐらいにしか見えない若い体に目鼻立ちが整った綺麗な顔。とりわけ顔のラインと艶やかな唇が美しい。密かに彼女のファンだというサラリーマン客もいるぐらいだ。

そんな優子が呼んだ相手とは……この店のバーテンダーでありオーナーの駿河。彼の作るカクテルは美味しいと評判が高く、またその甘いマスクとはうらはらに寡黙で紳士的な雰囲気が人気である事は言うまでもない。

「今日はまた、随分と遅いんですね」

駿河の言う通り、時計の針は既に23時を過ぎて少しの所を指している。とても普通の人妻が飲み歩いている時間では無い。とは言え、実は優子に関しては時々起こりうる事であるのも承知の上で聞いているのだが。

優子の夫は名前を聞けば誰もが頷く大手企業のシステムエンジニアである。有能であるが故に日々が忙しく、終電ギリギリに帰ってくる日は良い方で、タクシーでの深夜帰宅や会社に泊まりで籠る事もしばしば。

そんな寂しい生活を埋めるように独身の友人達とこの店に顔を出し始めたのが最初のきっかけだったが、最近では話を優しく聞いてくれる駿河に甘え、一人でも飲みに来るようになったという訳である。

そして……今日の優子はいつになく荒れていた。アルコール度数の高いカクテルをわざと選んでいるように見受けられる。

カウンターの下にはミニスカートから零れる長い足。そしてトレードマークのようになっているいつも露出の多い衣服。それが見られて感じるタイプの女の特徴である事、そして構ってもらいたい気持ちの表れである事ぐらい駿河はとっくに見抜いていた。

「今日は……どうかされましたか?」

新しい飲み物を差し出しながら、目を細めにこにこと尋ねる駿河に

「最近家で会話が無くって……これじゃ一人暮らしと変わらないわ」

グラスを片手に溜息をつきながら、優子は不満を口にする。明日は祝日。休み前だという事は今日もおそらく遅くまで仕事をし、タクシーでの帰宅なんだろう。

家庭の話は何度も聞いている駿河ではあるが、今日はいつもに比べてペースも早ければ大きな溜息の数も多い。毎日すれ違いの生活がとうとう限界なのか。

優子がどれだけ夫を愛しているのか、それは何度も聞いて知っていた。そして……愛があるからこそ、満たされない時間が耐え切れないという事も。

目の前に開かれた薄手のニットから見えているきれいな谷間や、きゅっと締まった腰。そして長い足。その全てを一人では持て余しているに違いない。

女性に免疫のない若者だったら思わず触っていいのかと、そんな勘違いをしてしまいそうな程寄せられた胸元を見て楽しむのも悪くは無いが……。

   
    
  ちらりと壁にかけられた時計を見ると閉店の時間まであと1時間。今日は幸い団体客があったおかげでアルバイトも一人雇っている。

時間と、アルバイトと、満たされない優子。駿河はそんな3つのキーワードを頭に浮かべ、パチパチと瞬時に脳内でそろばんを弾く。

答えは……簡単に決まった。

「宜しければもう一杯飲みませんか? 特別なカクテルなんですけど」

女性は基本的に”特別”というセリフに弱い。しかもお気に入りである駿河から自分だけに贈られた言葉。優子はもちろんその言葉に興味を示す。

「何? 飲んでみたいわ」

その言葉を聞いた駿河は軽く頷くと、後ろの戸棚から一つの瓶を取り出し、手際良くそれをステアしていく。長い手指の先でバースプーンがくるくると回り少しの泡がグラスを彩った。

彼が手に取ったボトル書かれているのは【orchid】(蘭)のラベル。市販されているお酒ではない。凝り性な駿河が古い洋紙を取り寄せ自ら綴ったラベルまでが彼のオリジナル。

そしてこf?れは……ただ甘くて美味しいお酒では無い。特別なカクテルである理由。そう……実は、駿河特製の媚薬入りリキュールなのである。

「どうぞ」

そうとは知らないまま、勧められるままにそのカクテルを口に含んだ瞬間、優子の瞳は一瞬でとろんと溶けた。

「美味しい……ほんのり甘酸っぱくて、不思議な味」

「お気に召して良かったです。私が作ったリキュールなんですよ」

優子がその一杯を飲み干すまでにさほど時間はかからなかった。元々お酒には強い彼女ではあるが……その彼女から見てとれる明らかな変化。

駿河を見つめる視線が熱く、恋人同士ように変わっていく。

「あれ?私……。今日はいつもよりも駿河さんが素敵に見えるわ」

媚薬はじわじわと、しかし確実に優子の肉体を満たし、犯していく。その姿を見ながら駿河はゆっくりと立ち上がった。

(蘭開 第1話おわり/第2話につづく)

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家出少女 ラバトリー改造2

第1話:前編

 大ぶりの百合の花がわたしを囲んでいます。強い癖のある匂いで、鼻が閉じたがるほどもはや異臭なのです。わたしはとても居心地が悪く、でもお尻だけはそわそわして浮いてきてしまう。わたしは和式便器の中をずっと覗いてました。四つん這いで、トイレの床に手をついて、便器の水溜りを見つめていました。便器は黄ばんでいました。わたしの肌の色に似ています。わたしの肌の色は黄色く、くすんでいて、暗い照明の中では特に、どす黒いほどなのです。もっと美しい肌に生まれていれば、こんなふうに便器と向かい合って対話することもなかった。でも、それはそれで、お楽しみかもしれない。

 隆也さんが、わたしを縛りつけたのです。両腕は、水を流すレバーの部分に、そして、足は開くように、胴体と繋げて縛った。わたしはお尻を突き出すことはできるけれども、それ以外、ほとんど身動きが出来ない。そうだ、もう一つ、便器に顔を押し付けることも出来るかもしれない。

 わたしは便器の出っ張りに、口づけをした。便器は硬く、硬すぎて冷たく、冷たすぎてクールだ。わたしは便器が嫌いではない。

 誰も来なかった。いつまで経ってもこない。わたしは裸体だ。わたしは待ちくたびれている。股が冷えて、腹が突っ張り、膝が震え、それでも、頭の中は常にエンジンがかかっていて、フル稼働状態だから、冷えることは無い。いっそ頭の中に扇風機を埋め込んで、冷やしてやれたらどんなに楽だろう。そしたら、冷静な頭で、自分のことを真上から見下ろせるだろう。見下ろして、馬鹿め、と、一笑に付し、腹を蹴り上げるだろう。それか、泣き喚きながら止めてくれと哀願するかもしれない。誰に? もちろん、自分自身にだろう。

 隆也さんは、わたしを見た瞬間、獲物を捕らえたような眼つきをした。わたしは、囚われたような目つきを、したんだと思う。わたしはすでに、奴隷だった。それが、とても当然のような気がしたのだ。隆也さんとは、わたしが働いているデパートの菓子売り場に、ふいと現れて、高いチョコレートを買った。それが最初の出会いだった。わたしは、隆也さんの表情を見てしまって、その声を聞いて、手が震えた。その震えは、身体全体にすぐ拡がった。粘膜まで震えて、熱をもち、膿みさえ湧いてきそうなほど、わたしはすぐ腐ってしまった。そうだ。わたしは腐った肉なんだろう。だからこんなに鴉の嘴のような隆也さんの手に、啄ばまれて、もう、ぼろぼろになってしまった。ぼろぼろになって、骨になった私には、もう魅力は無い。便器となって、ご奉仕しよう。

 便器になりたいと、わたし自身が言い出したのです。あなたはもうわたしには飽きたはずだ。もう、啄ばめる肉は、残っていないのだから。皮膚も千切れ、肉はスカスカ、残った骨や関節だけで、誰か別の人に抱いてもらう。骨まで、どうか、わたしを味わってほしい。わたしの骨からは、血よりも濃いエキスが出るはずだ。

 隆也さんが二回目、わたしの店にやってきて、メモを渡してくれて、仕事が終わって、そのメモに書いてあった店に行ったら、隆也さんは、わたしよりも遥かに美しい女と酒を飲んでいた。「君ね、きっと、いい奴隷になるね。僕の眼を見ただろう。見て、うっとりとしただろう。僕には分かるんだ。君は自分を大切にしない女だね。僕はそういう女は嫌いじゃない。中途半端はイヤだろ? 本格的に破滅したいなら、何でも僕の言うことを聞いていればいいんだよ。君は僕の奴隷。この人は、僕の愛している人。君は、この人の言うこともちゃんと聞くんだよ。」

 その女は、わたしより年上だったが、わたしよりも若く見えた。わたしは顔色も悪く、顔が貧相で、地味で暗い女だから、すでに年寄りみたいなのだ。一方、その女は健康的で、肌の露出も上品で、唇が厚く、肉惑的な美人だった。囀りのような、よく響いてよく転がる声をしていた。丸い玉が転がっていくような、ポンポンと、弾みのある声で、わたしのことを、なにこのブス、こんなブスに触られたりすんの嫌よ、と言った。蔑むという悪意もなく、無邪気に、子供のようにあっけらかんとわたしを打ちのめした。わたしは打ちのめされて、申し訳なくなった。わたしは幼少から、醜い容姿のせいで貶められるのは慣れていたけれども、せっかく隆也さんの奴隷になれたのに、容姿のせいで不愉快な思いにさせてしまうなんて、申し訳なかった。わたしは出来る限り、美しくなる努力をするから、奴隷にしてください、と頼み込んだ。女は、汚らわしいものをみるように、その美しく艶やかな顔を歪め、じゃあ、今、おまんこを舐めなさい。お上手だったら、わたしの眼の届く範囲で生きることを許してあげる、と言った。

 店は個室で、テーブルにはクロスがかかっていたが、いつ店員がやってきてもおかしくない。でも、わたしは、何も考えられなかった。隆也さんの眼が、わたしを追い詰めるのです。隆也さんは、じっとわたしを見つめてくれる。わたしの底を見ようとする。底の、澱を見ようとする。澱は、きっと泥だらけで見にくいだろうに、面倒にも泥の中を探ろうとする。隆也さんはとても率直な人なのだ。自分は嘘ばかりつくくせに、他人の嘘は許さないし、見抜くのも上手い。見抜いて、追い詰めるのも上手い。わたしには分かる。そんな人間は、恐れられるが、酷く人を引きつけるものだ。
 
   
    
 
 わたしはテーブルの下に潜り込み、女の股を開かせた。スカートをまくり、太腿を掻き分ける。女の太腿はしっとりと柔らかく、とてもジューシーだった。いつまでも触っていたいほどだったが、その触感をもっと味わおうと手を伸ばしたら、女が爪の長い手で、わたしの手をピシャリと強く叩いた。わたしは舌でしか、女を味わえないらしい。女はパンティーも履いておらず、陰毛も剃っていた。この女もセックスのときには隆也さんの奴隷になるのかと、悲しくなった。隆也さんは奴隷にはならないのだろうか? 隆也さんが、尻を叩かれ、苦痛と快楽に顔を猿のように醜く歪ませている姿を、見たい気もするが、わたしは一生見られないだろう。この女とは、いつもそんな変態的なセックスをして、その後で、油っぽい食事とフルーツを頬張ったり、一緒に今度はどんなセックスがしたいかとか、語り合ったりしているんだろう。わたしは少し悲しくなったが、わたしは所詮舐めることでしか、この女に奉仕できない。わたしは女のつるつるのおまんこに顔を埋め、無我夢中で吸った。女は最初は痛がって身体を跳ねさせたが、じきに加減が分かってくると、私の舌に一番感じる花芯を押し付けてくるようになった。わたしは小刻みに、舌を震わせ、女にご奉仕した。女は、すぐに、か細い声を出して、イッた。

 隆也さんがわたしを最初に抱いてくれたのは、その日の夜で、三人でシティーホテルに入った。わたしは膣には入れてもらえなかった。欲しかったのに。すごく、欲しかったのに。隆也さんはわたしの膣に極太のヴァイブレーターを無理やりねじ込み、わたしのアナルを犯した。アナルを犯されるのは初めてで、ほぐされることもなく、隆也さんの太くてよくくびれたおちんちんが、わたしを犯した。内臓が圧迫されて、痛くて気が狂いそうになって、本当に狂っていたのかもしれない、叫び声を上げて、わたしは一瞬気が遠くなった。隆也さんはそれでも容赦しなかった。女はわたしの苦しむ様を、ビデオに撮っていた。隆也さんがあんまり激しくわたしを揺さぶるもんだから、入れていたヴァイブレーターがスポンと間抜けな音を立てて抜けてしまって、ベッドの下へ転がり落ちた。隆也さんは舌打ちをしたが、それでもわたしを責めさいなむのは止めず、わたしの腸壁を破く勢いで、突いて、突いて。女はケタケタ笑いながらヴァイブレーターを拾い、わたしの口に突っ込んだ。喉の奥をつかれてげえっと胃の中のものと一緒に吐いたら、隆也さんもわたしの中に射精した。隆也さんは、ちょっぴり呻いた。呻き声が嬉しかった。もっと、わたしの中で快楽を感じて欲しかった。隆也さんの快楽に歪む顔が見たい。もっと、もっと。

 その日から、わたしは職場も放棄し、独り暮らしのアパートに閉じこもり、ひたすら隆也さんの連絡を待つようになった。

 わたしはいつでも駆けつけた。隆也さんは、わたしをいろいろなところへ縛り付けた。公園のジャングルジムに、水銀灯に、滑り台に、股を広げて。海でも、わたしを裸にして、わたしの中を犯した。もちろん、膣には入れてくれなかった。お尻の穴が好きなのだ。わたしのお尻はよくほぐれるようになった。よく、お漏らしをするようになって、わたしは家ではオムツを履くようになった。隆也さんは浣腸も好きなので、わたしの腸はぼろぼろになり、下痢と便秘をくりかえすようになってしまった。

 働かなくなって、収入が途絶え、親に怪我をしたと嘘をついて、送金してもらった。でも、家賃もそのうち払えなくなり、隆也さんに相談したら、俺のうちに来い、と命令された。これ以上の喜びはなかった。隆也さんに四六時中奉仕が出来て、隆也さんの命令さえ聞いていれば、わたしは幸せなのだから。本当に、幸せなのです。わたしは愛されてはいなかったが、目障りなわけでもない。そばにいてもいいなら、もっといたぶられたかった。いたぶられて辛くて泣き叫んでいる姿が、本来の自分の姿なのかもしれない、と思う。そんな風に、自分を可哀相にしなければ、自分を愛せない。自分を愛しいと思えないのです。因果なもんです。

 隆也さんは、わたしを、苦しめるために、全身をベッドにくくりつけ、手でこちょこちょ気が遠くなるほどじれったくくすぐった。くすぐったすぎて、あまりにも苦しくて、わたしは失禁してしまった。女はわたしがちょろちょろと失禁する様をビデオで撮って、ネットで流し、わたしを晒し者にするのが??好きだった。女は玄人だったから、夜は仕事に行くことが多く、わたしは女が仕事に行っていて、隆也さんが家にいるときは、隆也さんを独り占めに出来た。隆也さんは、たまにわたしとお話をしてくれた。犬か猫に話しかけるように、赤ちゃん言葉で話すこともあった。わたしは小動物になった気分で、とてもいい気持ちだった。でも、最後には、お前は奴隷で、俺のちんちん舐めることとケツの穴に突っ込まれることしかできない、能無しの屑なんだから、そんなケツの穴みてえな口で笑うな、と、たしなめられる。でも、本当は知っている。隆也さんは、わたしをたまにだけど、可愛がったり撫でたりするのも、嫌いじゃないのだ。隆也さんは繊細で、とても頭がいいから、とても孤独な人だ。孤独だが、隆也さんの脳味噌の中には何人もの人格がいる。多重人格とか、病的なものではなくて、仮面の強いバージョンみたいな。演じることが好きな人なのだ。きっと、仕事中は真面目で誠実なよく頭の切れる社会人なんだろう。わたしには分かる。わたしだけ、知っている。わたしに優しくしたがるのも、確かに隆也さんの一面なのだろう。わたしはそんな隆也さんも、好きだ。

(ラバトリー改造 第1話おわり/第2話につづく)

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家出少女 ラバトリー改造1

第1話:前編

 大ぶりの百合の花がわたしを囲んでいます。強い癖のある匂いで、鼻が閉じたがるほどもはや異臭なのです。わたしはとても居心地が悪く、でもお尻だけはそわそわして浮いてきてしまう。わたしは和式便器の中をずっと覗いてました。四つん這いで、トイレの床に手をついて、便器の水溜りを見つめていました。便器は黄ばんでいました。わたしの肌の色に似ています。わたしの肌の色は黄色く、くすんでいて、暗い照明の中では特に、どす黒いほどなのです。もっと美しい肌に生まれていれば、こんなふうに便器と向かい合って対話することもなかった。でも、それはそれで、お楽しみかもしれない。

 隆也さんが、わたしを縛りつけたのです。両腕は、水を流すレバーの部分に、そして、足は開くように、胴体と繋げて縛った。わたしはお尻を突き出すことはできるけれども、それ以外、ほとんど身動きが出来ない。そうだ、もう一つ、便器に顔を押し付けることも出来るかもしれない。

 わたしは便器の出っ張りに、口づけをした。便器は硬く、硬すぎて冷たく、冷たすぎてクールだ。わたしは便器が嫌いではない。

 誰も来なかった。いつまで経ってもこない。わたしは裸体だ。わたしは待ちくたびれている。股が冷えて、腹が突っ張り、膝が震え、それでも、頭の中は常にエンジンがかかっていて、フル稼働状態だから、冷えることは無い。いっそ頭の中に扇風機を埋め込んで、冷やしてやれたらどんなに楽だろう。そしたら、冷静な頭で、自分のことを真上から見下ろせるだろう。見下ろして、馬鹿め、と、一笑に付し、腹を蹴り上げるだろう。それか、泣き喚きながら止めてくれと哀願するかもしれない。誰に? もちろん、自分自身にだろう。

 隆也さんは、わたしを見た瞬間、獲物を捕らえたような眼つきをした。わたしは、囚われたような目つきを、したんだと思う。わたしはすでに、奴隷だった。それが、とても当然のような気がしたのだ。隆也さんとは、わたしが働いているデパートの菓子売り場に、ふいと現れて、高いチョコレートを買った。それが最初の出会いだった。わたしは、隆也さんの表情を見てしまって、その声を聞いて、手が震えた。その震えは、身体全体にすぐ拡がった。粘膜まで震えて、熱をもち、膿みさえ湧いてきそうなほど、わたしはすぐ腐ってしまった。そうだ。わたしは腐った肉なんだろう。だからこんなに鴉の嘴のような隆也さんの手に、啄ばまれて、もう、ぼろぼろになってしまった。ぼろぼろになって、骨になった私には、もう魅力は無い。便器となって、ご奉仕しよう。

 便器になりたいと、わたし自身が言い出したのです。あなたはもうわたしには飽きたはずだ。もう、啄ばめる肉は、残っていないのだから。皮膚も千切れ、肉はスカスカ、残った骨や関節だけで、誰か別の人に抱いてもらう。骨まで、どうか、わたしを味わってほしい。わたしの骨からは、血よりも濃いエキスが出るはずだ。

 隆也さんが二回目、わたしの店にやってきて、メモを渡してくれて、仕事が終わって、そのメモに書いてあった店に行ったら、隆也さんは、わたしよりも遥かに美しい女と酒を飲んでいた。「君ね、きっと、いい奴隷になるね。僕の眼を見ただろう。見て、うっとりとしただろう。僕には分かるんだ。君は自分を大切にしない女だね。僕はそういう女は嫌いじゃない。中途半端はイヤだろ? 本格的に破滅したいなら、何でも僕の言うことを聞いていればいいんだよ。君は僕の奴隷。この人は、僕の愛している人。君は、この人の言うこともちゃんと聞くんだよ。」

 その女は、わたしより年上だったが、わたしよりも若く見えた。わたしは顔色も悪く、顔が貧相で、地味で暗い女だから、すでに年寄りみたいなのだ。一方、その女は健康的で、肌の露出も上品で、唇が厚く、肉惑的な美人だった。囀りのような、よく響いてよく転がる声をしていた。丸い玉が転がっていくような、ポンポンと、弾みのある声で、わたしのことを、なにこのブス、こんなブスに触られたりすんの嫌よ、と言った。蔑むという悪意もなく、無邪気に、子供のようにあっけらかんとわたしを打ちのめした。わたしは打ちのめされて、申し訳なくなった。わたしは幼少から、醜い容姿のせいで貶められるのは慣れていたけれども、せっかく隆也さんの奴隷になれたのに、容姿のせいで不愉快な思いにさせてしまうなんて、申し訳なかった。わたしは出来る限り、美しくなる努力をするから、奴隷にしてください、と頼み込んだ。女は、汚らわしいものをみるように、その美しく艶やかな顔を歪め、じゃあ、今、おまんこを舐めなさい。お上手だったら、わたしの眼の届く範囲で生きることを許してあげる、と言った。

 店は個室で、テーブルにはクロスがかかっていたが、いつ店員がやってきてもおかしくない。でも、わたしは、何も考えられなかった。隆也さんの眼が、わたしを追い詰めるのです。隆也さんは、じっとわたしを見つめてくれる。わたしの底を見ようとする。底の、澱を見ようとする。澱は、きっと泥だらけで見にくいだろうに、面倒にも泥の中を探ろうとする。隆也さんはとても率直な人なのだ。自分は嘘ばかりつくくせに、他人の嘘は許さないし、見抜くのも上手い。見抜いて、追い詰めるのも上手い。わたしには分かる。そんな人間は、恐れられるが、酷く人を引きつけるものだ。
 
   
    
 
 わたしはテーブルの下に潜り込み、女の股を開かせた。スカートをまくり、太腿を掻き分ける。女の太腿はしっとりと柔らかく、とてもジューシーだった。いつまでも触っていたいほどだったが、その触感をもっと味わおうと手を伸ばしたら、女が爪の長い手で、わたしの手をピシャリと強く叩いた。わたしは舌でしか、女を味わえないらしい。女はパンティーも履いておらず、陰毛も剃っていた。この女もセックスのときには隆也さんの奴隷になるのかと、悲しくなった。隆也さんは奴隷にはならないのだろうか? 隆也さんが、尻を叩かれ、苦痛と快楽に顔を猿のように醜く歪ませている姿を、見たい気もするが、わたしは一生見られないだろう。この女とは、いつもそんな変態的なセックスをして、その後で、油っぽい食事とフルーツを頬張ったり、一緒に今度はどんなセックスがしたいかとか、語り合ったりしているんだろう。わたしは少し悲しくなったが、わたしは所詮舐めることでしか、この女に奉仕できない。わたしは女のつるつるのおまんこに顔を埋め、無我夢中で吸った。女は最初は痛がって身体を跳ねさせたが、じきに加減が分かってくると、私の舌に一番感じる花芯を押し付けてくるようになった。わたしは小刻みに、舌を震わせ、女にご奉仕した。女は、すぐに、か細い声を出して、イッた。

 隆也さんがわたしを最初に抱いてくれたのは、その日の夜で、三人でシティーホテルに入った。わたしは膣には入れてもらえなかった。欲しかったのに。すごく、欲しかったのに。隆也さんはわたしの膣に極太のヴァイブレーターを無理やりねじ込み、わたしのアナルを犯した。アナルを犯されるのは初めてで、ほぐされることもなく、隆也さんの太くてよくくびれたおちんちんが、わたしを犯した。内臓が圧迫されて、痛くて気が狂いそうになって、本当に狂っていたのかもしれない、叫び声を上げて、わたしは一瞬気が遠くなった。隆也さんはそれでも容赦しなかった。女はわたしの苦しむ様を、ビデオに撮っていた。隆也さんがあんまり激しくわたしを揺さぶるもんだから、入れていたヴァイブレーターがスポンと間抜けな音を立てて抜けてしまって、ベッドの下へ転がり落ちた。隆也さんは舌打ちをしたが、それでもわたしを責めさいなむのは止めず、わたしの腸壁を破く勢いで、突いて、突いて。女はケタケタ笑いながらヴァイブレーターを拾い、わたしの口に突っ込んだ。喉の奥をつかれてげえっと胃の中のものと一緒に吐いたら、隆也さんもわたしの中に射精した。隆也さんは、ちょっぴり呻いた。呻き声が嬉しかった。もっと、わたしの中で快楽を感じて欲しかった。隆也さんの快楽に歪む顔が見たい。もっと、もっと。

 その日から、わたしは職場も放棄し、独り暮らしのアパートに閉じこもり、ひたすら隆也さんの連絡を待つようになった。

 わたしはいつでも駆けつけた。隆也さんは、わたしをいろいろなところへ縛り付けた。公園のジャングルジムに、水銀灯に、滑り台に、股を広げて。海でも、わたしを裸にして、わたしの中を犯した。もちろん、膣には入れてくれなかった。お尻の穴が好きなのだ。わたしのお尻はよくほぐれるようになった。よく、お漏らしをするようになって、わたしは家ではオムツを履くようになった。隆也さんは浣腸も好きなので、わたしの腸はぼろぼろになり、下痢と便秘をくりかえすようになってしまった。

 働かなくなって、収入が途絶え、親に怪我をしたと嘘をついて、送金してもらった。でも、家賃もそのうち払えなくなり、隆也さんに相談したら、俺のうちに来い、と命令された。これ以上の喜びはなかった。隆也さんに四六時中奉仕が出来て、隆也さんの命令さえ聞いていれば、わたしは幸せなのだから。本当に、幸せなのです。わたしは愛されてはいなかったが、目障りなわけでもない。そばにいてもいいなら、もっといたぶられたかった。いたぶられて辛くて泣き叫んでいる姿が、本来の自分の姿なのかもしれない、と思う。そんな風に、自分を可哀相にしなければ、自分を愛せない。自分を愛しいと思えないのです。因果なもんです。

 隆也さんは、わたしを、苦しめるために、全身をベッドにくくりつけ、手でこちょこちょ気が遠くなるほどじれったくくすぐった。くすぐったすぎて、あまりにも苦しくて、わたしは失禁してしまった。女はわたしがちょろちょろと失禁する様をビデオで撮って、ネットで流し、わたしを晒し者にするのが??好きだった。女は玄人だったから、夜は仕事に行くことが多く、わたしは女が仕事に行っていて、隆也さんが家にいるときは、隆也さんを独り占めに出来た。隆也さんは、たまにわたしとお話をしてくれた。犬か猫に話しかけるように、赤ちゃん言葉で話すこともあった。わたしは小動物になった気分で、とてもいい気持ちだった。でも、最後には、お前は奴隷で、俺のちんちん舐めることとケツの穴に突っ込まれることしかできない、能無しの屑なんだから、そんなケツの穴みてえな口で笑うな、と、たしなめられる。でも、本当は知っている。隆也さんは、わたしをたまにだけど、可愛がったり撫でたりするのも、嫌いじゃないのだ。隆也さんは繊細で、とても頭がいいから、とても孤独な人だ。孤独だが、隆也さんの脳味噌の中には何人もの人格がいる。多重人格とか、病的なものではなくて、仮面の強いバージョンみたいな。演じることが好きな人なのだ。きっと、仕事中は真面目で誠実なよく頭の切れる社会人なんだろう。わたしには分かる。わたしだけ、知っている。わたしに優しくしたがるのも、確かに隆也さんの一面なのだろう。わたしはそんな隆也さんも、好きだ。

(ラバトリー改造 第1話おわり/第2話につづく)

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家出少女 苦しくても恋6

第6話:また初めから

いつから分煙なんて話ができたんだろう?昔は席で吸っていたのに…
愚にも付かないことを考えながら煙草を吸っていたサトシの元に、同僚がやってきた。
「最近どうしたんだ?」
煙草に火をつけながら、同僚は前振りもなく切り出す。
「なにが」
通用するとは思えないが、サトシは惚けてみた。
「なにが、じゃない。最近おかしいぞ、お前」
同僚の顔色は真剣そのものだ。
「そうかな?」
敢えて軽めに否定してみる。
「そうかな、って……あのなぁ…」
同僚は大げさにかぶりを振った。
「ミスが多い、と言っているんだよ」
じろり、と目を細め、サトシを睨みつける。
「そ、そう……だな」
痛いところを突かれた。確かに最近ミスが多い。
スケジュール管理やら他チームとの調整…
そのフォローを彼がやってくれている。それもわかっていた。
「まったく……自覚があるのなら認めろよ。心配しているんだよ、みんな」
やれやれと頭を振り、心配しているような顔色になる。
「みんな?」
「らしくないって、俺もそう思う」
「……そうかも」
「女か?」
「ぶほぁ」
缶コーヒーを口から吹き出す。
「吹き出す奴なんてリアルでいたんだな……じゃなくて」
一旦言葉を切る。
「一年前もそうだったよな……」
「あのことは……もう大丈夫だって」
否定する。
それしかできない。
「でも、今回は違う、そうだろ?」
「ちがっ」
「いーや、そうだね。そうとしか思えないぜ?」
「………」
「過去に辛いことがあったからって、それを引きずっていたって仕方がないじゃないか。
いーじゃないか、好きな女ができたって。それを自分で否定して、なんになる?」
同僚の言葉は真剣なものだった。
「失う怖さにおびえてたら、何もできないってことさ」
サトシの肩をたたき、同僚は喫煙所を後にした。 
「怖がっていたら駄目ってことは、わかるんだよな……」
煙草の火を消し、サトシもこの場を離れることにした。

待ち合わせをした居酒屋。
今更こんな所に居たって、彼が来るわけではない。
それは理解しているが、体が勝手に向かってしまう。
エリはビールのグラスを片手に黄昏れる。
店内は仕事帰りと思われるサラリーマンや、若い学生の集団で賑わっていた。
黄昏れるにしても場所を選べばいいのに……
ここに一人で居ても虚しいだけだ。
同僚との会話を思い出す。

『あんた、一人でそこに行ってるの?あほじゃないの?』
『だって……来るかもって思うと…』
『はぁ……あのねぇ…今までのあんたなら、そんな受け身じゃないでしょうに』
『だったらどうしろっていうのよ』
『当たって砕けろ』
『えーーー!砕けろって…』
『恋愛には自分から行かなきゃだめ、ってのがあんたの信条でしょう?それがなに?一回断られた位でそんなに尻込みしちゃって』
『でも…』
『また浮気されるって思ってるの?でもさ、あんたの話を聞く限り、その男は大丈夫だと思うけどね』
『わかんないじゃん、そんなこと』
『だったら、あきらめなさい。でも、好きだから、逢いたいからそこにいっちゃうんでしょ?』
『うん…』
『なら、素直になるしかないんじゃないかな?』

今日はこないかもしれない。
このビールが終わったら出よう、そう思った矢先に目に付いた人がいた。
ドクン、と心臓が跳ね上がる。
一人じゃない。
職場の同僚だろうか。少し小太りな人と背の高い人と一緒にいる。
彼がこっちを見る。
それに気づいたエリは、彼に気づかれないように身を伏せる。
だが、それも遅かったようだ。
彼は連れの人たちと離れ、こちらに向かってくる。
や、やばい…
来て欲しいと思っていた。
でも、本当に来るとは思わなかった。
エリは心が千々に乱れるのを感じる。
逃げたい。だが、それもできない。
「すみません…」
彼が声をかけてきた。
聞き慣れた、少し低くて優しい音色の声。
心が躍る。
うれしさに泣けてきそうだった。
だが、それに身を任せる訳にはいかない。
なぜなら、どこか彼の声には他人行儀なものがあった。
エリは躊躇しながらも、声をかけてきた彼に向かって顔を向けた。
「何かご用ですか?」
精一杯の他人の振り。
だが、彼の顔を見た途端、それは脆くも崩れる。
サトシ……
目の前に恋い焦がれた彼の顔がそこにある。

サトシはエリの顔を見ることができない。
なぜここに居るのか。
自分は同僚と飲みに来ただけだ。
彼女に気が付かない振りをすることもできた。
だが、目があったと思った瞬間、同僚に断りをいれていた。
その時の彼らの顔はなぜニヤ付いていたのかサトシにはわからなかったが、今はそんなことより目の前のことだ。
目の前にきて、どうしていいかわからない。
他人行儀的に声をかけてみたが、相手もそれに倣うように他人の振りだ。
「えっと、その……」
自分の中で葛藤がおきる。
別れの言葉を出したのは自分だ。
今更どんな言葉をかければいい?
正直わからない。
「すみません、人違いだったみたいです…」 
へたれだ。
自分でそう思うが、どうしていいかわからない。
そのままその場を立ち去ろうとしたが、腕を捕まれた。
「この期に及んで、人違いって、何様のつもりよ!」
店内に響く怒声。
サトシの腕をつかんだまま立ち上がったエリは、そのまま一気に捲し立てた。
「こっちに気が付いて来たかと思えば、あげくの果てに人違い?馬鹿にするのもいい加減にしてよ!なんなのよ!別れを切り出したのはそっちなのに、それが嫌だから毎日毎日こんな所に通って、あんたが来るかもしれないなんて、ありもしないことにすがって!なんなのよ!なんで来るのよ!なんでいるのよ!人違いだっていうなら、別れたっていうなら、なんであたしの前にいるのよ!」

感情が抑えられない。
うれしいはずなのに、それすら吹っ飛ばす位に溢れ出た感情。
近づいてきたときはうれしかった。
声をかけてくれた。
でも、人違いで済まそうとしたこと。
なにそれ?
なんなの?
もうやだ。
こんな人だなんて思わなかった。
例え彼がトラウマを抱えていたって、そんなことは知らない。
涙が溢れてくる。
場所もわきまえないことはわかっている。
でも、行き場のない溢れた感情を止めることはできない。
「なんでよ……」
涙の向こうで、少し困ったような顔をしたサトシがいる。
つかんだ腕を放しサトシから距離を取ろうとするが、椅子に阻まれて動けない。
「ここを出よう」
サトシはエリに顔を近づけ、そう告げた。
 
   
    
 
会計をすませたサトシが、店の前で待っているエリの肩をたたく。
「お待たせ、行こうか」
「行くって、どこに?」
泣いたおかげで鼻声になっている。
「どこって……」
「まさか、ホテル、とかいうんじゃないでしょうね?」
「い、いや、そんなつもりは…」
「じゃぁ、どんなつもりよ!大体、人違いだったんでしょ?なのに…」
また涙が出てくる。
それを見たサトシは狼狽えることしかできない。
「人違いと言ったのは謝るよ。それくらいしか出てこなくて…」
「知らないっ!」
エリにそっぽを向かれる。
そういえば出会ってから喧嘩なんかしたことなかったな、とどうでもいいことを思い出す。
そうだな…
「行こう、ここじゃあれだしな」
サトシはエリの腕を取り、歩き出す。
「だから、どこに行くのよ!」
「いいから」
エリは捕まれた腕に引きずられながらも、サトシについて行く。
暫く歩くと、見覚えのある場所。
あの時のホテルだ。
それに気付いた時、エリは捕まれていた腕を乱暴に振り解いた。
「何考えているのよ!」
「ここしかないだろ、始めて、終わらせた場所だから」
「え……?」
エリは何を言っているのかわからない風な顔になる。
「だから……」
ばっちーん!
「な……」
エリの平手がサトシの腕を打つ。
「信じられない!終わったって言ったのは、あんたでしょう!それなのに、なんでこんな所に来るのよ!馬鹿じゃないの!」
殴られたことに放心しているのか、サトシは何も答えられない。
「馬鹿っ!馬鹿っ!大馬鹿っっ!!」
両の手でサトシの体を叩く。
涙でくぐもった声で「馬鹿」を連呼する。
道行く人々が、好奇の目でこちらを伺っている。
だが、サトシはそんなことを気にすることもなく、エリにされるがままにしている。
「ごめん……」
俺は本当に馬鹿だな、今更ながら気づくなんて。
叩き続けているエリに腕を回し、そのまま抱きしめた。
「本当にごめん……」
「ばかぁ……」
エリはサトシに抱きしめられながら、涙を流すことしかできないでいた。

ホテルの入った二人の距離は微妙なものだった。
ソファーにはエリが、ベッドにはサトシが腰掛けている。
サトシはバツが悪そうにしながら、話を切り出そうにしているが。そういう空気ではない。
エリは止まらない涙を流し続けていた。
どこにこんなに水分があるのだろうか、というくらいに。
「えーとだなー」
「なによ!」
「怒鳴るなよ」
「うるさいわね!泣いているのを止めているんだから、話しかけないで!」
どういう論拠だろうか。
止めているって、止まってないじゃないか。
言いかけそうになるが、その言葉を飲み込む。
暫くエリの言うままに話しかけないでいたが、その時に気が付いた。
少し痩せたか…
そんなことをぼんやりと考えていたら、エリが突然立ち上がりこちらに向かってきた。
「?」
目の前に立たれサトシは一瞬戸惑う。
パシンっ
エリの右手がサトシの頬を打ち、そのまま両手でサトシの顔を押さえる。
「ん……」
キスだった。
有無を言わせないものを感じるキスだった。
「好きなの…」
「うん…」
「どうしようもなく、好きなの」
「うん…」
「あんたになんて言われても、好きなの!」
「わかってる」
「あんたがいないなんて考えられないの!あんた以外いらないの!だから、だから…」
目から溢れる涙が止められない。
「終わるなんて、別れるなんて言わないで!お願いだから!あたし…」
「また始めればいいんだよ、初めから」
「え?」
エリの手を顔から離し、そっと抱き留める。
「たぶん、何も始まっていないから」
エリの体温を体に感じながら、その細い体に腕を這わせる。
「俺も、きみが好きだ」
サトシの言葉にエリの目が見開かれる。
過去にあったことは、過去でしかない。
今、この気持ちだけが大事だということ。
「俺は怖がっていたんだ、失うことに」
サトシはエリの顔の正面にまわり、彼女の目を見る。
「でも、今度は自分で失うところだった。それって、馬鹿なことだよな」
言葉を切り、エリの額にそっと口づけする。
「きみが好きだ。ただ、それだけだったんだ」
「あたしは、サトシさんが好きです。あたしを、彼女にしてください」
サトシの言葉を受けたエリの告白。
「言われちゃった……俺から言おうと思ったのに」
「そんなことさせない。あたしが、好きなんだもん」
にっこりと、エリが微笑む。
その目からは涙が流れる。
だが、それは悲しみのものではない。
「俺からもお願いします。きみと一緒にいたい」
「うん……もちろん……」

ドキ??ドキする。
この人とは初めてじゃないのに。
それこそ、初めてセックスするわけでもないのに。
サトシの手がエリの胸に這ってくる。
その動きは時折激しくなるが、基本的には優しい感じだ。
乳房を揉み、時折乳首を弄ぶ。
乳首への刺激も時に激しい。
だが、痛いということはない。
気持ちのいい刺激だ。
「舐めて……」
サトシは言われるままにエリの乳首へ舌を這わせる。
生暖かい感触がわかる。
ぺろりと一舐めした後、唇全体を使って乳首への愛撫を行う。
乳首だけだなく、胸全体に舌を這わせ、また、口いっぱいにほおばるように愛撫を重ねていく。
「や……だめ……」
気持ちよすぎるからか、エリは思わず歓喜の声をだす。
「胸だけでいいの?」
意地悪な言葉だ。
エリは首をふり、それに応える。
「じゃ、脚を開いて…」
サトシに言われるまま脚を開き秘部を露わにする。
その秘部からは既に一筋の糸が流れていた。
「胸だけでこんなに……」
サトシは秘部の中の豆の部分に指の腹を押し当てる。
ビクンッ
エリの中に強烈に何かが跳ね起きた。
「ん……」
声を押し殺し、クリトリスへの刺激に耐える。
だが、その抵抗も意味がない。
クリトリスの愛撫から、自然とヴァギナが開いてくる。
そこからはこれでもかと愛液があふれ出てくる。
「ねぇ……あたしじゃなくて……」
既にこれ以上もないくらいに隆起したサトシのペニスに手をあてる。
「こんなになって……すっごい苦しそう……」
エリの指が触れた途端、サトシのペニスが激しく反応する。
「触っただけなのに……なんかうれしい」
エリはサトシの股間に頭を入れ、ペニスに舌を這わす。
「う……」
ぺろりと一舐めし、先端からあふれ出たカウパーを飲み込む。
「気持ちよくなってきているみたい…」
そのまま亀頭を口に含む。
「おい、いきなり」
含んだまま口の中で舌を動かす。
口の中でサトシのペニスが反応してくるのがわかる。
「こ、こら…そんなに激しくするな…」
サトシの言葉を無視し、ペニスへの刺激を繰り返す。
「ふふっ……気持ちいいんでしょ?」
「気持ちいいけどさ……」
「なに?はっきり言ってくれないとわからないよ?」
悪戯っぽく微笑み、エリは答えを促す。
「それはだな……」
?? といいつつ、サトシの手がエリの膣内に侵入する。
「やっ、ちょっと……」
サトシからの思わぬ反撃に、ペニスから口が離れる。
「エリだって、こんなにしているじゃないか」
「だって……」
舐めているだけで気持ちがいいだなんて、言えるわけがない。
「そろそろ、きて……」
サトシはエリの正面にまわり、自分の分身をエリのヴァギナに押し当てる。
「あ……」
ゴムをしていないことを思い出す。
「いいの、このまま……」
ゴムなんかに邪魔されたくない。
エリはサトシを感じたいのだ。
「わかった」
そのままエリの中にサトシ自身が入っていく。
「ん……」
久しぶりの感覚に、思わず声が漏れそうになる。
「すご……」
サトシもエリの中の滑りに思わず声を出す。
「このまま……」
今の感覚をそのままにしておきたかったのだが、それに気が付かないようにサトシが腰を動かし出した。
「や、だめ……はげしくしないで……」
腰を動かしながらサトシがキスを求めてきた。
「ん……ん……」
舌と舌を絡ませ、互いの口の中で唾液が混じり合う。
激しく吸い取られるようなキスだ。 
だが、エリはサトシに負けないように腰を動かしてくる。
二人はお互いを求め貪るように躯を合わせる。
「はぁ…はぁ…」
「エリ……俺…」
「い、いいよっ…あたしも……」
動きは激しくなり、限界が近づく。
「うっ」
サトシから精が吐き出され、エリの膣内を満たす。
その時、エリもまた絶頂を迎えた。
ペニスを抜こうとしたサトシに抱きつく。
「まだ、だめ」
「でも」
「だめったら、だめ。こうしていたい」
「いいけどさ……」
膣内にはまだサトシがいる。
最高に気持ちのいいことだ。

「なんか、照れくさいね…」
お互いの温もりを確かめるように抱き合う。
何度も躯を重ねて来たというのに、おかしなことだ。
でもなぜか気恥ずかしい。
「じつは、俺も」
照れくさそうにサトシが同意の言葉を返してくる。
「おかしいね」
にこりとエリが笑顔で返す。
「でも、こうしていると、幸せだって、思う」
背中に廻した腕に力を込める。
?? 「幸せか……そうかもな」
あたしがいて、サトシがいる。
この幸せは手放したくない。
浮気されるかもしれない。
でも、それ以上にこの人が好きだから、大丈夫。
絶対離さないし、離れさせない。
エリは心の中で固く誓う。
この人と一緒に、生きていきたい。

(苦しくても恋 第6話おわり)

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家出少女 苦しくても恋5

第5話:別れ

 夜の8時。
 指定された場所は初めて逢った居酒屋。
 待ち人はまだ来ない。
 エリはお通しに箸をつつきながらビールを口につける。
 サトシはまだこない。
「時間指定したの、サトシなのに…」
 時間より早く着いたのは自分なのだが、ここにいないサトシに悪態をつく。
 それよりも指定してきたこの場所が気になる。
 何かあるんじゃないか。
 結局、最後に逢ってから二ヶ月が経とうとしていた。その間、メールでの連絡も数えるほど。電話なんてとてもじゃないができる状況ではなかった。
 サトシが仕事で多忙(デスマーチというらしい)で、エリもまた仕事に忙殺されていた。
 だが五日前、サトシからメールが届いた。
 仕事が一段落したから逢いたい、といった内容だった。
 エリは無理矢理に仕事の都合をつけ、今日という日を指定した。
「さすがに無理矢理過ぎたかなぁ…」
 同僚からはブーイングの嵐だった。
 上司でさえも早く帰ることができない状況で、ただの社員のエリが誰よりも早く帰ることなど、今の職場では許されないことだった。
「でも仕方がないじゃない」
 どうしても外せない用事だと押し切った。ただし、後々が大変なことになるだろう。
「まぁ、いいか」
 溜息と共にもやもやを吐き出す。
「遅れてすまない」
 かけられた声に向かって顔を上げる。
 そこには、少しやつれた感じのする男が立っていた
 一瞬誰だかわからない。
 だが声には聞き覚えがあり、またこの二ヶ月待ち望んでいたものだった。
「座っても、いいかな?」
 エリは無言で頷く。
 サトシはにっこりと微笑み、エリの対岸の席に腰を下ろした。

「痩せた?」
「痩せた痩せた。二ヶ月で五キロだな」
 ダイエットに悩んでいる人が聞いたら怒られる言葉だ。
「ま、それだけ忙しかったってことさ」
 久しぶりの会話。
 うれしい。
 ただ話しているだけだが、それだけで心が躍る。
 その所為か、言葉がうわずってくるのがわかる。
 変わらない少し低い深みのある声。
 少し頬がこけたようだが、優しい顔つき。
 好きな男が目の前に座っている。
 それだけで幸せな気分になれる。
 だが…
「ねぇ、ここってさ…」
 エリは先ほど感じた疑問をサトシに聞いてみる。
「うん?あぁ、そうだね」
「なにか意味あるの?」
「意味?意味ってなにさ」
「だってさ、初めて逢 ったところだよ?逢ったと言ってもサトシは酔いつぶれていたけど」
「別に意味なんてないさ。たまにはこういう所でもいいだろ?」
 一旦言葉をきり、にっこりとエリに笑みを返してくる。
「ところでさ、忙しいと言っていたじゃない?」
 話を変えてきた。
 やはり、なにかあるとエリは感じる。
 だが、サトシの表情に含みを感じられなかった。
「うん……でも、なんとかなったから」
「そうか…ならいいんだけどさ」
 一瞬サトシの顔が曇る。
「無理させたかな、とね」
「そんなことないよ」
 エリは最大級の笑みを返す。
 大丈夫。
 気のせいだとエリは自分に言い聞かせ、サトシとの会話を楽しむことにした。
 
   
    
 
 居酒屋を出て、街を歩く。
 行き先はあのホテル。
 エリの少し前を歩くサトシの背中が、近くて遠い。
 好きだけど、手に入らないもの。
 一緒に居られるのはうれしい。
 だけど…
 なんだか、寂しさも感じられる。
 自分のものではないからか。
 不意にサトシの足が止まる。
「ちょっと、歩くの速かったかな?」
 エリの横に並び、微笑んでくる。
「そんなことないよ。大丈夫だから」
 エリはサトシの腕に自分のそれを絡ませ、しなだれかかる。
「いこ」
 寂しくなんかない。
 サトシはこうして居るのだから。
 サトシの腕にぶら下がりながら、エリは自分に言い聞かせる。
 エリは歩こうとするが、サトシが動かない。
「どうしたの?早く行こうよ」
 エリは俯いているサトシの顔をのぞき込む。
 その顔には、なにかが浮かんでいる。
「あのさ」
 刹那の沈黙の後、口を開く。 
「何?」
「俺さ、エリが好きになってきたんだよね」
 思いがけない告白。
「え?それって…」
 エリの胸に、淡い期待が湧き起こる。
「要するに、恋愛感情」
 エリの顔が自然と綻んでくる。
 これって両想い?
 あたしも、と言いかけたその時。
「でもさ、そうなったら終わりっていう約束」
 サトシの目に悲しい何かが浮かぶ。
「生きているよな」
 え?
 エリの胸にどう表現していいかわからない何かが沸いてきた。
 胸の中が苦しくなる。
「だから、終わり」
 サトシは淡々とした口調でエリに告げた。
 恋愛感情を持ったら、この関係は終わり。
 確かに約束した。
「な、なんで……?」
 サトシの言葉に混乱する。
 どうしてそんなことを言われるのかが、全くわからない。
「君も、俺のこと好きだよな」
 エリの目が見開かれる。
「この間、俺の聞き間違いじゃなければそう言ってた」
 二ヶ月前、ホテルでこぼした言葉。
「冗談だって言ってたけど」
 冗談だってごまかした。
 それで済んだとは思っていなかった。
「寂しい気もするけど、約束は約束だから」
 言葉に感情がない。
 ただ、事実を伝えるだけの口調に、エリは悲しくなる。
 エリは目頭が熱くなってくるのを感じる。
「やだ」
 とっさに出てきた否定の言葉。
「そんなの、やだ」
 エリの目からは、知らずと涙が流れてきていた。
「好きになったっていいじゃない」  
「俺は、もうあんな思いをするのはいやだ」
 エリの言葉を否定するサトシの顔に苦悶の色が満ちる。
 一年前に見た顔と同じだ。
「傷つくのが怖い、と言われればそれまでだが……でも、俺に取っては辛かったんだ」
 かつての彼女のとのこと。
 酷い振られ方だったと、サトシから聞いた。
 だから約束した。
「いいの?それで本当にいいの?」
 言葉はすでに涙声だ。
 エリは必死になって追いすがる。
「あたしはやだよ!だって…だって……」
 好きだから。
 愛しているから。
 もうこの人しかいない。
 この人以外あり得ない。
 心の中で必死になって叫ぶが、その叫びが言葉にできない。
「約束は約束」
 とめどなく涙が溢れてくる。
「だからもう、逢うのは辞めよう」
 淡々とした口調の中に、無理矢理吐き出すかのように少しだけ苦いものが混じっていた。
 サトシはエリの腕を解き、一歩後ずさる。
 俺は酷い奴だな。
 泣きじゃくるエリを直視できない。
 女の子を泣かせるなんて、男としてしちゃいけないことだ。
 だが、泣くとわかっていても話すしかなかった。
 エリを好きになった自分に気付いた時、その感情を認めるまで時間がかかった。
 否定はできなかった。
 そして、約束を思い出した。
 恋愛ごとで嫌な思いをした二人だからした約束。
 サトシはこの感情を認めたとき、話をすることを決めた。
 終わらせるんだ、と。
 だから話した。
 結果として泣かせてしまった。
「やだ……」
 エリはその場で崩れそうになりながら、子供のように泣きじゃくるしかできないでいた。

(苦しくても恋 第5話おわり/第6話につづく)

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家出少女 苦しくても恋4

第4話:不思議な関係

「ん……」
 逢った途端にキスをする。
 往来だろうと店の中だろうとかまうことなく。
 サトシに出会ってから二ヶ月が過ぎようとしていた。
「んはっ……きょ、今日は一段と…」
「一段と、なーに?」
 サトシの目をじっと見つめ、次の言葉を待つ。
「えっと……」
 エリの視線から目を逸らす。恥ずかしいからなのか、顔がほんのりと赤い。
「んふふ……サトシくんて、可愛いんだ」
「ちょ……」
「行こっ」
 言葉に詰まっているサトシの手を取り、歩き出した。

「何度か見たけど、やっぱサトシくんのは大きいねぇ…」
 サトシのイチモツを指ではじきながら、エリはつぶやく。
「それに、形もいいし。すっごく気持ちよくなれるんだよねぇ…」
 はじいた後は指を絡ませる。
 その動きは艶めかしく、的確にサトシのイチモツの急所を攻めていく。
「あのさぁ…大きいとか形とか、他を見たことないから知らないんだけど」
 エリの攻めに耐えながら、軽口をたたいてみる。
 だが、その抵抗は無駄に終わる可能性が高い。
「えっとね、大きいから、口に入れるのも一苦労なんだよ?」
 れろっ
 指の次は舌だ。
 エリのぬめりとした舌が亀頭に絡んでいく。
 指での愛撫で出てきたカウパーとエリの唾液が混ざる。
 ちゅぱ……
 エリは舌で亀頭だけでなく、イチモツ全体を舐め回していく。
「ひもちひひ?」
 イチモツを咥えながら、上目遣いでサトシを見る。
 その目はこれ以上もないくらいに蠱惑(こわく)色に満ちていた。
 だが、サトシはその問いにあえて答えず、ひたすら快楽に耐えようとしている。
 そのサトシの意図を感じ取ったエリは、舐めるの止め、一気にイチモツを口の中に含んだ。
「うっ…」
 一瞬にして広がる感覚に、サトシは思わず声を出す。
「ん…ん…」
 ちゅ……
 口の中で舌を亀頭に絡ませる。
 その動きは、まるで別の生き物のように感じられる。
「ちょ、ちょっとまってくれ!」
 サトシはエリの頭をつかみ、動きを止める。
「な、なに?」
「いきそうになったよ…」
「いいよ、飲んであげるし」
「へ?」
 飲む?何を?
「ザーメン」
 サトシの目の問いかけに、しれっとエリは口にする。
「って、なんだって?」
「だから、ザーメン」  ザーメンって…
 あ、精液か…
 間抜けにもサトシの頭の中で変換される。
「って、えぇぇぇ?」
「なに?そんなにびっくりなの?」
「の、飲めるものなのか?」
「うん、大丈夫。だから、あむっ」
 再びサトシのイチモツを口に咥える。
 今度は舌だけでなく、口全体と、頭も同時に動かす。
 その動きから導き出される快楽は、サトシが今まで味わったことのないものだった。
「……も、もう…」
「ひひよぉ…だしへぇ」
 口をもごもごと動かしエリは答える。
 その瞬間サトシは絶頂を迎え、エリの口の中に精を吐き出した。
 エリは口からイチモツを抜き出し、ザーメンが零れないように口を窄める。
 その動きにもサトシのイチモツは反応を返す。
「ん……んん…」
 のどを動かし、口の中に溜まったザーメンを飲み込む。
「濃い……」
 にっこりとサトシを見つめる。
「まだ元気だね?」
 男の性とは悲しい。目の前の女が可愛くもいやらしくしているだけで、敏感に反応してしまう。
「今度は、あたしを、ね?」
 エリはサトシのイチモツをつかみ、自分の股間に誘う。
 愛撫をされた訳でもないのに、すでにエリの股間は濡れていた。
「あたしね、濡れやすいみたいなの。なんていうのかな……しゃぶっているだけで感じちゃったのかも?」
 サトシはそのまま自分のイチモツをエリの秘部に押しつける。
「あ」
 ゴムをしていない。
 
   
    
 
「いいよ、今日は安全日だから」
「でも」
「いいの」
 言うが早いか、エリはサトシのイチモツを自分から秘部に埋め込んだ。
「あ、ふぅっ」
 サトシ自身がエリの中に入っていく。その動きにエリは躰を仰け反らせる。
「うっ……」
 エリの中は充分すぎるほど濡れていて、サトシ自身が滑らかに動くことができる。
 サトシはエリを抱え、腰を突き上げることでエリを犯していく。
「や……だめ……」
 エリもサトシに抱きつき、背中に手を這わせる。
 そして、自分で腰を動かしサトシを犯していく。
「ん……」
 エリの唇がサトシのそれに押しつける。舌を入れ、舌に絡みつかせる。
 互いの口の中で唾液が混じる。
 部屋の中にいやらしい音が響き渡る。
「はぁっ……も、もう……」
「お、俺も……や、やばい…」
 すでに二度目になるが、サトシは限界が近づいているのを感じた。
 エリも絶頂を迎えることができそうだ。
「で、でる……」
「な、なかに、膣内(なか)にだしてぇ……」
「で、でも……」
「い、いい、か……ら……」
 最後の一突きにと腰をふり、それに答える。
「で、でる!!」
 その瞬間サトシから精が吐き出しエリの膣内を満たしていく。
「あぁ………!!!」
 膣内に満たされた精液を感じることで、エリも絶頂を迎えた。
 ビクビクと震える躰をサトシに預ける。 
 イクなんていつ以来だろう……
 エリはサトシに抱きつきながら、このままでいたいと感じていた。

「なぁ?」
 し終わった後の微睡み。
 実はこれが一番気持ちがいい。
 だが、それを遮るかのようにサトシが口を開いた。
「ん?」
「俺たちって、なんなの?」
 サトシからの疑問符。
 確かに、そういえばそうだ。
 この関係ってなんだろう?
「彼氏彼女、ってわけでもないし……」
「そうだねぇ…」
「それで、毎週セックスしているだろ?」
 セックスという言葉を臆面もなく口にできる。
 その割に、恥ずかしい言葉は口にしない。
 サトシはそういう男なのだと、最近になってわかった。
 そこが何となくかわいいというか……
「セフレ……、かな?」
「セフレ、ねぇ…」
 サトシは一瞬考える顔をするが、あきらめたようなそんな表情になる。
「そういうのもありなのかな、実際、今は……」
「今は、なに?」
 サトシの歯切れの悪い言葉に、エリがつっこむ。
「まぁ、彼氏彼女って、のはちょっとな」
 サトシが困ったような顔で答える。
 それもそうだ。大失恋をしたばかりなのだから。
「うん、わかるよ。だから、セフレ。いいでしょ?」
「そうだな……お互い、今は彼氏彼女を求めていない。だから、恋愛感情は抜き。あくまでセフレということで」
「いいよ」
「それともう一つ」
 一旦言葉を切り、エリを見据える。
「どちらかが相手に恋愛感情を持った場合、この関係は終了。それでいいかな?」
「え……?」
 何を言っているのかわからなかった。
 だが、この言葉はサトシの覚悟だ。
 エリにはそれがわかってしまう。
「うん……それでいいよ」
「よし、契約成立」
 セフレ。
 躰だけの関係。
 それだけでもいい。
 いや、もしかしたらこの方がいいのかもしれない。
 傷つくことがないのなら。

(苦しくても恋 第4話おわり/第5話につづく)

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家出少女 苦しくても恋3

第3話:出会い

一ヶ月近く連絡を入れられなかったのは仕事が忙しいからだった。
 それは仕方がないことであり、それ以上の理由はないと思う。
 いや、思いたいだけなのかもしれない。
 エリがサトシに言った、『好き』という言葉。
「冗談だと言っていたけど……まぁ、たぶん……」
 たぶん、というより確証に近い。
 会うたびに心を開き、サトシに対する接し方もだんだん変わってきている。
 出会ったばかりの投げやりなものではない、むしろ恋人への態度に近い。
 正直なところ、サトシにとってその言葉は重い。過去に合った恋愛への恐怖。それは、一種のトラウマとも言うべきものだ。
「とはいえ……今の俺じゃ何もできないよな…」
 職場の喫煙所。
 今は午前二時。仕事は押しに押して、徹夜続きの毎日だった。
「とりあえず、メールくらいは入れておいた方がいいんだろうな…」
 ポケットから携帯電話を取り出し、画面を開いた。
『こんな遅くにごめん。連絡ができなかったのは、仕事が死ぬほど忙しいからです。今もまだ職場にいます。連絡できるようになったらします。』
 これ以上書きようがない。
 まぁいいか、とサトシはこのメールを送った。

 サトシからの連絡が来たのはうれしい。
 でも、忙しいなら忙しいでもっと早く連絡をくれれば、こんなに不安にならないのに…
「って、恋人でもなんでもないのに、不安なんて……馬鹿みたい…」
 エリは独りごち、メールの返事を書く。
『こんな時間なのにまだ仕事?体は大丈夫?ちゃんと休んでご飯食べるんだよ!』
「これくらいしか書けないなぁ……あとは絵文字でハートとか入れておくか」
 などと言いながらも、エリは心が躍っているのを感じた。
 返事が返ってくることを期待しながら、送信ボタンを押した。

 一年と少し前。
 その日は意識が飛ぶほど呑んだ記憶がある。
 酒は呑めないことはないが、量を重ねることができない。同僚や先輩からは呑めないことに文句も言われたが、呑めないものは仕方がない。
 だが、その日は周りの人間が心配するほど呑んだ。それこそ浴びるように。
 サトシにしてみれば、呑まなければならなかった。
 結婚の約束もした相手からの一方的な別れ。
 理由は実に陳腐だ。
『サトシには悪いけど……正直、世の中お金なんだよね』
 彼女の勤め先の御曹司からのプロポーズを受けたそうだ。
 まるで漫画かドラマのようなお話だ。それがまさか自分の身に降りかかってくるとは。
 付き合った時間の永さは関係ないらしい。
 正直、絶望感でいっぱいだった。
 仕事も手に着かず、些細なミスを連発し、顧客にまで迷惑をかけている。
 思った以上にダメージを受け、そんな自分に絶望感を抱く。
 仕事帰りに何を求めるでもなく盛り場に行き、酒を呑む。
 そんな毎日を繰り返していた。
「そんな呑み方、そのうち体を壊すよ?」
 カウンターで一人呑んでいる時だった。
 自分より一回りは歳が下だろうか。今風の姿をした女が声をかけてきた。
「そんなことはわかっていますよ。でも、呑まないといけないから、こうして呑んでいるんで」
 すでに何杯目だろうか。
 そんなことを思いながら、サトシはジョッキの中のビールを煽る。
「すいませーん!生大一つ!」
「やめなよ!さっきからみているけど、あんたすでに十杯くらい呑んでいるよ!」
「いいれです。今は呑みらいのらか…ら……」
 肘をつき、言葉がうまく出なくなる。
「ほら、口が回ってないよ」
 女はサトシを支えながら、隣の席に座り込んだ。
「店員さーん!あたし、ここに移りますねー」
 これが、サトシとエリの出会いだった。

 一年と少し前。
 これで何回目なのかな…
 浮気されるたびに思う。
 付き合う男は必ず浮気をする。
 この男もそうだ。
 しかも決まって付き合いだして半年。
 一回ならいい。出来心と無理矢理納得するだけだ。
 でも、必ずその後一年以内にまた浮気される。
『ぶっちゃけていうと、おまえつまんないんだよ」
 かつての男から言われた言葉。
 告白してきたのは男の方なのに酷い言われようだと思う。
 言われたのはそのときの男だけじゃない。今まで付き合った男たちも同じことを言っていた。
「つまらない女か…」
 呑み屋の席で独りごちる。
 女友達はそんなことはないと口をそろえて言うが、エリにしてみれば慰めにもならなかった。
 確かにそうかもしれない。
 学生の時も、仕事をしている今も、彼氏といるよりバイトや仕事に集中していた。
 仕事の忙しさにかまけ、彼氏の相手を忘れる。
 そして浮気され、別れる。その繰り返し。
「はぁ……あたし、恋愛に向いていないのかな……」
 そんなことを思いながら店内を見渡す。
 さっきから気になる人。
 一人カウンターで呑んでいるようだが、その量が尋常じゃない。
 ビールを注文する度に煽るように呑んでいる。
「なに、あの呑み方……って、あたしには関係ないじゃん」
 目を反らし、自分のコップに手をかける。だが、気になる。
「すいません、生大一つ」
 先ほどの男が店員を捕まえてビールを頼む声が聞こえる。
「って、もう十杯目くらいじゃないの?」
 エリは立ち上がり、カウンターまで歩き出した。
 
   
    
 
泣いている。
 明らかに自分より年上で、その上見た感じではしっかりしていそうな男が、子供のように泣きじゃくっている。
 それもエリの胸に顔を埋めて。
「なんでこうなったのかしら?」
 泣き続ける男を見つめながら、嘆息する。
 酷い酩酊状態だったこの男を連れて呑み屋を出た後、とりあえず介抱しなければと入ったのはいいが、それがラブホテルというのは失敗だったのかもしれない。
 だが、不思議と悪い気はしない。
 男はまだ泣いている。
 女に振られたと言っていた。
 泣くほど好きだったって、ことだよね…
 そういえば別れた時に泣いた記憶がないことを思い出し、この男を羨ましくも思う。
「ねぇ…」
 男の顔に手を添え、そのまま自分の顔に近づけ、チュッ、と唇を啄んだ。
 鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔になる男。
「な、ななななななな…」
 男の口から言葉にならない言葉が溢れ出す。
「びっくりした?でもさ、泣いていてもしかたないし?」
 そういうと、エリは男に抱きついた。
「しよ?それで忘れればいいんじゃないかな?」
 今度は激しく男の唇に吸い付いた。

「う…ぎもぢわる……」
 サトシは軽い吐き気と頭痛で目が覚めた。
 胃の中が酒で満たされている感じがする。
「呑み過ぎたか………って、え?」
 隣で女が安らかな寝息を立てている。
 しかも相手も自分も裸である。
「というか…ここはどこだ?」
 明らかに自分の部屋ではない。
「えーと……」
 思い出そうと記憶を辿るが、吐き気が邪魔をする。
 そうか…
 頭痛に耐えながらも思い出す。
「昨日呑みまくって…この子と一緒にここに来て…」
 誘われるまましてしまった。
 よく知らない女と。
「うわぁちゃぁ…」
 酒の勢いとはいえ、見知らぬ女とセックスをしてしまった自分にがっかりする。
 とりあえず、服を着なければとベッドから這い出ようとした時。
「あ、起きたんだね」
 女が目を覚ます。躰を起こすと、ふくよかな胸元が露わになる。
「よく眠れたみたいだね」
 女に言われて気付く。確かに、ここ最近眠れなかった。そのことをこの女に話した。
「あ、あぁ…」
「それはよかった。誘った甲斐があったってもんだ」
 女はこぼれるような笑顔を向けてきた。
 昨夜も感じたが、この子はめちゃくちゃ可愛い。
 もしかしたら、あいつよりも…
 頭に浮かんだことを振り払いながら、とても重要なことに気が付いた。
 この子はなんて名前だ?
 そう思ったとき、女が今気が付いたとばかりに口を開いた。
「あたしは、エリ。あなたのお名前は?」
「俺は…」
 自分の名前を告げようとしたが、一瞬サトシの顔に警戒の色が浮かぶ。
「大丈夫だよ、別に偽名って訳じゃないし」
「いや、疑っている訳じゃないんだけど…」
 正直戸惑う。
 隣に見ず知らずの男がいて、それに行きずりにセックスまでしてしまったのに、この女は何とも思わないのか?
 サトシの頭の中で疑問が湧き起こる。
「びっくりしているのはあたしもだよ。でもね…」
 エリは一旦言葉を切る。
 サトシはその次に出てくる言葉を待つ。
「今更仕方がないじゃない?」
 あきらめにも似た、それでいて明朗とした言葉が返ってきた。
「くくく…」
 思わず笑いがこみ上げる。
「そ、それもそうだな…」
 こういう子もいるんだな。
「俺はサトシ」
 エリはサトシの名前を聞いてにっこりと微笑む。
「ところで…顔色が悪いけど、大丈夫?」
 エリの顔に不安の色が浮かぶ。
 そうだ。
「ご、ごめ……う…」
 サトシはトイレに駆け込み、胃の中のものを吐き出した。
「胃薬持っているから、後で飲んでね」
 エリはトイレに向かって呼びかけた。

 これがエリとサトシの始まりだったのだ。

(苦しくても恋 第3話おわり/第4話につづく)

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