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家出少女 其レモ恋ト言ウ2

第2話:中華街ドリーム 後編

店の外に出ると、大気が少しだけ暖かく感じる。
それだけ空調が効いていたのだろうか。
沢山食べて、飲んで、話して笑って、気分が物凄くいい。ふと、奈那子は辺りを見回した。
既に街のあちこち、シャッターが下りている。
時計を見たら、時刻はとうに9時を回っていたから、当然ちゃあそうか。

「お待たせ」

支払いを済ませた飛田が遅れて店から出てきた。
疎らに行きかう人々に紛れてふたりは歩き出す。
いつまのにか、絡み合う掌。しっかりと握り合って確かな体温を、互いに感じていた。

「んじゃまぁ、ホテルへ戻ろうか」
「ウン。あ、でもどうして今日はホテルなんて取ったの?」

隣を歩く飛田を見上げ、言った。

「てっきりラブホかと思ってたのに…」
「いや、これ渡しちゃうのにラブホってどうよ?」
「へ?これ?」

何のこと?と奈那子が問う間もなく、飛田は繋いだ手をやんわりと解いて、ジーンズの前ポケットから小さなケースを取り出した。

「手、出して」

反射的に受け取ったケースの中身は、間違いなく指輪だ。
そっと、蓋を開けてみると、リボンをモチーフにしたデザインのシルバーリングが収まっていた。

「…わぁ」

中央にはピンクルビーが輝いている。

「可愛い…」
「気に入ってくれた?」
「うん、凄く可愛い」
「今はソレで我慢してくれると嬉しい。ちゃんとしたの用意するから。だからってワケじゃないんだけど…あの、奈那子さん」

こんな往来で、全然ロマンティックじゃないけどでも、飛田があんまり真剣な表情(かお)していたからつい、奈那子も居住まいを正した。

「いつか俺と、結婚してください」

奈那子は、真直ぐ飛田をみつめて、

「…はい」

ゆっくり、頷いた。

             ☆

ガコンと、ベンダーの取出し口にダイエットコーラのボトルが落ちた。

(もーっ!盛り上がってきてたのに、どうしてケータイを店に忘れてくるかね?!安彦さんのド天然っ!)

あのあと、ホテルへと足を向けたまでは良かった。
が、歩く道々で飛田の携帯電話が無いことに気が付いて、で、恐らく食事した店に置いて来てしまったのではと、飛田がひとりで戻ってしまったのだ。
人通りが疎らな裏路地。
まだ営業中の店舗と、ベンダーの灯りが、奈那子の影をアスファルトに落している。
心の中で罵倒して、その反面微笑ましくも思う。
惚れた弱み、とでもいうのか、そういうのを全部ひっくるめて、愛しい。
屈んで、ボトルを取り出した。慎重にキャップを回して噴き出さないように外す。シュワッとした喉ごしが気持ちよかった。

「…ん…んふ…ッ」
(え?)

誰かの声が聞えた気がした。奈那子はキョロキョロと辺りを見回したが、人影はない。

(気のせい?)

再び、コーラを飲もうと飲みくちに口をつけた。

「…あ、ん。駄目、ってばぁ、こんなとこで…んん、ふ、あ」
(…ええッ?!)

気の所為ではなくて、誰かが居る――!
しかも、いたしている!

むくむくと湧き上がってくるのは単なる好奇心だ。
声のする方へ、奈那子は躊躇いなく近づいた。
細くて狭い、建物の隙間に影がひとつ。
いや、抱き合っているからそう見えるだけだ。奥が行き止まりなんだろうか、何だか薄暗い。
通りへ背中を向けた女に男がキスをしている。
吐息ごと貪るように絶え間なく、角度を変えながら貪るような、キス。

   
    
 
「…?!」

気配に気付いたのか、男が目蓋を開けて、奈那子を見た。少し眇めて、何事もなかったように、眼を閉じて行為に没頭する。
女の背中を抱いていた手が、そのなだらかなラインを辿っていく。
大きくて、長い綺麗な指が、ゆっくりと女の腰へ降りていく。

(…手、だ)

奈那子の視線が男の手に釘付けになっている。脳髄が痺れるような感覚だ。

「ふぁ、んん!」

くぐもった嬌声と共に、女の背中がビクン!とゆれた。男の手が強くきつく、尻の形が変わるくらい揉みしだいているんだ。
奈那子の最奥が、キュッと絞まる。

「あ、あ、あ、んんん!」
(感じている…このヒト、あんなに乱暴にされて、気持ちいいんだ)

最初は左手だけだったのに今は両手で揉んでいる。
唇は塞がれたままで。
ヨロリと、ベンダーに手をついて、でも目だけは二人から逸らさなかった。
荒くなる息。
艶かしく、蠢(うごめ)く、手。
さっき潤したばかりの喉が、渇く。

「ああっ!あ、あ、あ、ッあんっ!」

もじもじと、女の腰が揺らめいた。

(…私も、私もあの手にあんな風に)
「ナナコ?」
「!!」

弾かれたように振り返ると、安彦が立っていた。覗くのに夢中になっていて戻ってきたのに気が付かなかった。

「何を見て――」
(ヤバイっ!女の子にバレちゃうっ!)
「ち、ちょっと、こっち来て!」

声を潜めて、安彦の腕を引っ張った。
そして、そのまま身体を押し付ける――。熱くて堪らなかった。早く、内側の熱をはき出してしまいたかった。

「ナナコ?」

覗きこんだ安彦の眼に映った奈那子の表情(かお)は発情したそれ。

「…連れて行って」
「奈那子…」
「早く、ふたりっきりになれるとこ、連れてって。そんで…して」

近距離なのにタクシーを使って、ホテルに戻った。
慌ただしく、部屋に入るなり、奈那子は安彦の足元に跪いて、ジーンズのフロントを寛(くつろ)げた。
下着の上からむしゃぶりつく。唇を使って甘く食(は)んで、半勃ちになったソレを丹念に舐めた。

「ん、ん、ふ。は…」
「奈那子、ナナコ…」

大好きな安彦の手が、奈那子の髪に絡みつく。纏めていたシュシュが外れて長い髪が背中に流れた。
思うさま舐め弄った男根から唇を離すと、今度は右手を掴んで人差し指と中指に舌を絡める。滴り落ちる、女の唾液。
熱に潤んだ眼が、飛田をみつめる。

「ねぇ、コレ欲しい…安彦さん、コレが欲しいよぉ」

煽られるように、ふたりとも服を着たままでベッドへ転がった。
引っ掛りながら下着ごとジーンズを脱がされて、

「ああ――っ!」

欲しかったモノが漸く、与えられた。潤っていても慣らさずに突っ込まれた衝撃で痛みを伴っても、それすら快楽に変わっていく。

「ナナコのここ、全然触ってないのに、こんなにぬるぬるだ…そんなに欲しかった?」
「うん、…あっ、欲しかった、だから、膣(なか)こすってっ!」

悲鳴に近い、上ずった声だ。
ずるり、と奥で音がしたような気がした。
あとはもう、本能の、性欲の赴くままに――。

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