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家出少女 シャンパンと一本の薔薇 2

第2話:芝居

柏木章吾はその夜、物思いにふけりながら美月のマンションに向かっていた。一週間後に由美のいる本社に異動が決まっている為、美月に会えるのは今夜が最後だった。

「俺は悪役(ヒール)だ。本命がいるのに女を弄ぶ最低ヤロウだ。…よし。」

美月の部屋の前で、章吾は小声でつぶやいた。本当は美月に惹かれていることを、本人には知られたくなかった。何より、遠くで自分を信じている由美をこれ以上裏切りたくないし、美月の為にも悪役は演じ切らなくてはならなかった。

「…柏木さん?」

ガチャリと音がして扉が開き、美月が顔を覗かせた。章吾は不意を衝かれて焦った。
「や、やあ。チャイム鳴らす前によく判ったな。…こんばんは。」
「こんばんは…。だって、玄関前で何だかガサガサ音がしたから…」
「そうか。…シャンパン買ってきたんだ。」

章吾はそう言うと、紙袋に入ったシャンパンを持ち上げて見せた。

「柏木主任、本社ご栄転おめでとうございます。」

テーブルで向かい合い、シャンパンの入ったグラスを手に美月は言った。

「…そして、俺たちの最後の夜に。乾杯。」

章吾の声に合わせ、美月も目の高さにグラスを上げ、シャンパンを飲んだ。

「…美味しい。」
「好きなんだろ?スパークリング系。会社の謝恩会の時に見てたよ。3杯は飲んでたな。」
「あはは。見られてたんですね。」

美月は笑い、グラスを置いた。そしてうつむいて言った。

「最後の夜…なんですね。…寂しいな。」
「…」

その時、美月の携帯が鳴った。

「あ、ごめんなさい。」
「いいよ、取りなよ。」

見ると、京介からだった。

「…はい。どうしたの坂本君。」
『こんばんは、先輩。この前借りた本にマイクロSDカードが挟まっててさ、もしかしたら会社のじゃないかと思って…』
「あ!それ携帯の。あ~、どこで失くしちゃったのかと思ってたよ。私のバカ。ありがとね。明日お店に取りに行くわ。」
「…何?会社の人?」

美月の『坂本君』という言葉が気になったのか、章吾が声を掛けてきた。美月は携帯を手で塞ぎ、

「高校の時の後輩なんです。すぐ切るから。」

と答えると、声を落として京介に言った。

「ごめんね、今お客さんで…」
『例の彼氏?』
「うん、じゃあまた…」

美月が切ろうとした所へ、章吾が手を伸ばして来た。

「ちょっと貸して。…もしもし?」
『?はい?あれ?先輩の彼氏…さん?』
「柏木さん?」

京介も美月も驚いた。章吾は構わず話しかける。

「何だかやけに親しげだけど、もしかして新しい彼氏?」
「ええっ?!や…そんな…」

美月は驚いたが、京介は落ち着いていた。

『俺的にはそのポジション狙ってるんすけどね。』
「ふうん…君に美月の何が判ってるの?」

章吾の口調はいつになく挑発的だ。京介はどんなことを言っているのだろう。美月はハラハラしながら章吾を見つめた。京介も突然の質問に今度は動揺したようだった。

『何がって…ええっと…クラブの団体戦で負けた時、皆には励ましたり気合入れたりしてたのに、後で体育館の裏で一人で泣いてたり…』
「…はあ?」
『遠征の帰りに、疲れてるのに電車乗る時に迷子見つけちゃって、その子の為に一人で駅に残って、親が来るまで駅員さんと待ってたとか…古文が得意で、自分は受験もあるのに俺達の勉強見てくれたりとか。何かそういう人。おっちょこちょいだけどね。』
「そうか…判った。」

章吾はふうっとため息を付いた。

「…実は美月はな、首筋攻められると弱い。感じ易い。」
『へ?』
「ちょっと、何言ってるんですか柏木さんっ?!」

唐突に変な方向に話が向いたので、美月は焦った。

「それから、左の乳首の右斜め上7cmぐらいの所にほくろがあるぞ。」
『おおっ?そうなんですか?』
「ちょっと、もう、止めてください!!」

美月は真っ赤になって章吾から携帯を取り上げ、京介に口早に言った。

「と、とにかく明日夕方お店に行くから!おやすみなさい。」

   
    
 
美月の携帯を切る音がした後、部屋の中にはまた静けさが戻った。しばらくして、章吾が口を開いた。

「あいつ…お前のことかなり好きだぞ?お前はどうなんだ?」
「そんな事…判らないですよ。…たまたま再会した後輩で、私が勝手に捕まえて愚痴を聞いてもらったり、相談事したりしてるだけで…」
「誰が好きでもない女の愚痴なんか聞くかよ。普通は適当に話し合わせてさっさと切り上げるさ。男は面倒くさがりだからな。」
「でも、私が好きなコーヒーの銘柄のチェーン店で彼がバイトしてるから、よく行ってつい捕まえちゃうだけで…」
「だから、好きな女にじゃなきゃ捕まらないって。」

章吾は呆れた様に行った。

「柏木さんこそ!」

今度は美月が強い口調で言った。

「セフレの私に彼がいてもいなくても、私が誰を好きでも、どうでもいいじゃない!…ですか…。」

章吾は絶句した。美月は今にもこぼれそうな涙を目に溜め、彼を見つめていた。掛け時計の音だけが、静かに時間を刻んだ。

「…美月…」

彼は美月をじっと見つめた。やがて彼女を抱きしめ、そっと口付けをした。そして、彼女の華奢な右肩に、顎を乗せた。

「柏木さん…セフレは…そんなに優しく抱きしめたり、キスしてくれたりはしないんですよね?」
「…。」

章吾は美月を抱きしめたまま、黙って彼女の柔らかな髪をなでた。

「でも…柏木さんは、いつも優しく抱きしめて…キスも…優しかった…。」

観念したように、章吾は目を閉じた。美月は彼の両肩に手をかけて起こし、何か言いたげなその顔を見つめた。

「…えっち、しましょうか。」
「え?…でも…」
「私達は身体から始まったんだもの。身体で終りましょ。…ね?」

ベッドの上で、章吾は美月の服を脱がした。すべての衣服が取り払われた時、最後のせいか、緊張で彼女はほうっと息を吐いた。
章吾の唇が、美月の唇に重なる。…やがてそれは、胸に下りて行き、立ち上がった乳首を歯と舌で弄んだ。美月は声を押し殺す。章吾の手が、彼女のなだらかなウエストを伝い、秘部へと辿り着いた。指先で肉芽を優しくいじり、肉襞の間を丁寧になでる。次第に愛液が溢れ、章吾の指先を濡らす。彼はそのまま2本の指を、膣の中へと滑り込ませた。

「は…っん…」

美月は大きく息を吐いて、うっすらと瞳を開けた。その美しい顔を、章吾は愛しげに見つめていた。指は美月の感じる場所を探る。彼女の顔が妖しく歪み、再び瞳が閉じられた。

「柏木…さん…あっ…ダメ…」

苦しげに言う美月を眺めながら、また乳首を舌で弄ぶ。さらに章吾は3本目の指を深く挿し込んだ。同時に彼女の身体がびくんっと動く。

「ああっ…いやっ…あ…もう…」
「もう?」

章吾が意地悪く聞き返す。美月は両手を章吾の頬に添え、また瞳を開けてじっと見つめた。時々その瞳が喘ぎ声と共に切なく潤む。…やがて精一杯の甘えた声を込めて彼女は言った。

「欲しいの…お願い…入れてください…」

最後の方は消え入りそうだった。
章吾は微笑み、固くなった彼自身の先端を、美月の膣に少し入れた。それだけで彼女は強く反応した。

「っ!…もっと…ふか…く…」

美月がねだる。章吾は彼女の足を更に広げ、彼自身を一気に根元まで突き立てた。

「あぁっ!!」

美月から瞬間的な叫びが上がる。章吾は小さく息を吐くと、動き始めた。…スピードを徐々に上げて行く…。

「はっ…ん!…ああっ!…あっ!…っ!!…うっ…!」

章吾の動きに合わせ、ゆらゆらと乳房が揺れる。彼は美月の首筋に唇を沿わせて、何度か軽く噛んだ。その度に、彼女の品のいい色のルージュを引いた唇は艶声を上げた。
美月は腰を少し浮かせ、章吾の動きに合わせて角度を探った。程なくその身体が大きくうねり、反り返った。

「…っ!!…あああっ!!」

絶頂を迎えたのか、悲鳴にも似た声を上げ、ぐったりとしてしまう。構わず章吾は更に攻める。…彼の身体から吹き出した汗が、美月の胸に冷たく散った。

「…っ!…柏…木…さんっ…私…わた…し…っ!…」

激しく突き上げられ、美月はうわごとの様につぶやく…。その言葉は次第にまた、喘ぎ声に変わって行った。…章吾はたまらなくなって、彼女に口付けをした。

「んんっ…くっ!…ん…」

口を塞がれても尚止まらぬ彼の動きに、切ない声が漏れる…。美月の閉じられた瞳からは、一筋の涙が流れ落ちていた…。

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